金が4,378ドルまで戻すも最高値からまだ2割安——オルカン・S&P500への影響は?【2026年8月17日時点】
投資初心者向け。金は2026年8月17日時点で1オンス4,377.89ドル。史上最高値からは約22%安。9月FOMC利上げ観測とジャクソンホール会議を解説。オルカン・S&P500への影響も整理。
最新情報(8月23日追記): 金が4,600ドル台まで上昇、史上最高値からの差は2割弱に縮小
2026年8月23日時点で、金(ゴールド)価格は1トロイオンス4,602.40ドル前後まで上昇しています(Kitco「Gold Price Today」、2026年8月23日8:39ニューヨーク時間時点の気配値、前日比+84.20ドル・+1.86%)。本文執筆時点(8月17日・4,377.89ドル)からの6日間で見ると、約+5.1%の上昇です。
1月の史上最高値5,608.35ドルとの差は、8月17日時点の約22%から、今回時点では約18%まで縮小しました。本文で扱った「9月FOMCの利上げ見送り観測」が続くなかで、金価格がじりじりと戻している状況です。8月27〜29日のジャクソンホール会議・ウォーシュ議長の初講演を控え、この後さらに動く可能性がある点は本文の内容と変わりません。
金が4,378ドルまで戻すも史上最高値からまだ2割安——オルカン・S&P500への影響は?
投資初心者でも分かるように解説します。
(はじめにお断りしておくと、私はポートフォリオ管理ツールPFWiseの運営者です。記事の後半で自分のサービスにも触れます。)
金(ゴールド)価格は、2026年8月17日時点で1トロイオンス4,377.89ドル前後で推移しています。直近1か月では約+9.2%の値上がりです。
ここだけ見ると「金がまた上がっている」という印象を持つかもしれませんが、2026年1月につけた史上最高値5,589〜5,608ドルと比べると、いまの水準はそこからまだ約22%低いところにあります。例えば、史上最高値付近でまとめて(一括で)金を購入し、そのまま保有し続けている人なら、ドル建て換算でいまも含み損が22%ほど残っている計算です(ドル建て価格の変動のみを反映した概算で、為替[ドル円]の変動は含んでいません。実際の円建て評価額は、購入時と現在の為替水準によっても変わります。純金積立のように時期を分けて買っている場合は、平均購入単価が史上最高値そのものより低くなるため、含み損の程度はこれより小さくなります)。
1月の史上最高値から8月までの値動き
金価格は今年、値動きの荒い1年になっています。1月の史上最高値のあと、いったん6月24日に約3,959ドル(1月の史上最高値比−29.4%)まで大きく値を下げ(この経緯は別記事で整理しています)、8月上旬には、トランプ大統領が対イランへの追加攻撃を見送りホルムズ海峡再開への期待が高まったことで原油安・インフレ懸念後退が進み、金利が上がりにくいとの観測が強まったことを受けて4,300ドル台まで反発する場面もありました(こちらは別記事参照)。今回はその続きとして、8月に入ってからの値動きを動かしている「金利観測」という別の要因と、今後1〜2週間で最大の材料になりそうな「ジャクソンホール会議」を中心に整理します。
9月FOMCの「利上げ見送り」観測が金を支えている
直近1か月の金価格の下支えになっているのは、米国の利上げ観測が後退していることです。8月7日に発表された7月分の米雇用統計が市場予想を下回りました。8月12日のCPI(消費者物価指数)はおおむね市場予想どおりの結果でしたが、それでも利上げ観測をさらに後退させました。8月13日のPPI(生産者物価指数・企業間で取引される商品の価格変動を示す指標)は前月比0.0%と、市場予想の+0.2%を下回りました。これらが積み重なり、「9月のFOMC(米連邦公開市場委員会・9月15〜16日開催、金利は16日に決定)で利上げが見送られるのではないか」という見方が強まっていきました(この間の日米市場の値動きは8月14日の別記事で詳しく扱っています)。
金利を予想する材料としてよく使われるのが、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が公表する「FedWatch」という指標です。金利先物の取引データから、市場参加者が次回FOMCでの利上げ・利下げ・据え置きをそれぞれ何%の確率で織り込んでいるかを算出しています。
CME FedWatchの試算によれば、9月FOMCでの政策金利据え置き予想は、8月6日時点の45%から、7月の雇用統計を受けた8月7日には60%へ上昇。その後8月11日にいったん52%程度まで戻したものの、8月12日のCPI発表を経て60%前後、8月14日には69%まで上昇したとみられます(算出元・時点によって具体的な数値は異なることが多いため、本記事では特定のパーセンテージを断定的な事実としては扱いません)。1週間強のあいだに何度も上下しながら、全体としては据え置き優勢の方向へ動いたことになります。金利が上がりにくいという観測が強まったことが、直近1か月の金価格の値上がりを後押しした要因の一つです。
次の材料は8月27〜29日のジャクソンホール会議——新FRB議長ウォーシュ氏の初講演
金利観測をめぐる次の大きな材料は、8月27日から29日にかけて米ワイオミング州で開催される「ジャクソンホール会議」です。世界中の中央銀行総裁・経済学者が集まるこの会議は、FRB議長が金融政策の方向性について踏み込んだ発言をする場としてマーケットから強く注目されています。
今回とりわけ注目度が高いのは、2026年5月22日に就任した新FRB議長ケビン・ウォーシュ氏にとって、これが議長として初めてのジャクソンホール講演になる点です。講演は現地時間8月28日金曜の午前に予定されています。ウォーシュ氏はこれまでの発言で、目先の市場動向にとらわれず金融政策の大きな方向性を議論したいという趣旨を示唆したと報じられており、単なる次回会合の予告にとどまらない、金融政策の枠組み全体に関わる踏み込んだ内容になる可能性があります。
正直に書くと、ジャクソンホールでの発言がどちらの方向に転ぶかを事前に言い当てることはできません。ただ、金利観測に敏感に反応してきたこの1か月の金価格の値動きを踏まえると、ウォーシュ氏の講演内容次第で金価格が再び大きく動く可能性は高いと言えます。タカ派的(利上げ方向)な内容であれば金には逆風、ハト派的(利下げ・据え置き方向)な内容であれば追い風、という基本構図を覚えておくと、当日のニュースを理解しやすくなります。
金が上がる/下がるとどうなる? オルカン・S&P500への影響
ここが今回いちばん伝えたいところです。結論から言うと、オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)もS&P500も、金(ゴールド)を一切組み入れていません。どちらも株式だけで構成される指数で、GICS(世界産業分類基準・上場企業を業種ごとに分類する世界共通の基準)の11セクターに分類される「株式会社の株」のみが対象です。金という実物資産は、指数の外側にあります。
つまり、金価格がどれだけ上下しても、オルカン・S&P500だけに投資している人の評価額には直接の影響はありません。その代わり、金は「株式とは違う値動きをする資産」として、ポートフォリオに加えることで分散効果やインフレヘッジ効果を狙う、という位置づけになります。今回のように株式(S&P500)が最高値圏を保ったまま、金だけが金利観測を材料に独自に動く局面は、この「値動きの違い」がまさに表れているケースです。
金を持ちたい場合の一般的な考え方
NISA成長投資枠やつみたて投資枠を使って、オルカン・S&P500を中心に積み立てている人が金を検討する場合、一般的にはポートフォリオ全体の5〜10%程度を目安にする考え方が紹介されています。方法は主に2つあります。1つは証券会社や地金商が扱う純金積立(毎月定額で金地金を買い増していくサービス)。もう1つは国内の純金上場信託(1540)やSPDR Gold Shares(GLD、米国上場の金ETF)といった金ETF(株式のように証券取引所で売買できる、金価格に連動する投資信託)です。「増やす」というよりは「株式が崩れたときの緩衝材」としての役割になります。この2つは税制上の扱いが異なります。純金積立(現物の地金)は譲渡所得として総合課税(年間50万円の特別控除あり)の対象で、NISA枠は使えません。一方、1540のような国内の金ETFはNISA成長投資枠の対象商品に含まれており(つみたて投資枠は対象外)、税制面でも株式と同じ申告分離課税(他の株式・投資信託との損益通算が可能)です。どちらの方法を選ぶかで非課税枠が使えるかどうかが変わるため、購入前に証券会社の商品説明で対象区分を必ず確認してください。
例えば、毎月3万円をオルカン・S&P500の積立に回している人が、その5%にあたる1,500円を金の積立に振り向けているとします。今回のような1か月+9.2%の値動きがあれば、その月に積み立てた1,500円分は約138円の含み益です。金額としては大きくありませんが、株式と値動きの方向が異なる資産を少額でも持っておくことで、株式が下がる局面での値動きの緩和効果を体感しやすくなります。
あなたのポートフォリオへの影響は? 具体的な試算
仮に100万円のポートフォリオのうち5%(5万円)を金に配分していたとします。直近1か月の値上がり率(約+9.2%)をそのまま当てはめると、5万円の金保有分は約4,600円の含み益です。10%(10万円)を配分していた場合は約9,200円になります。金額としては大きくありませんが、これはあくまで「株式とは別枠で緩衝材を持っていた場合」の試算であり、オルカン・S&P500だけに集中投資している場合はこの値動きの恩恵も影響も一切受けません。
逆に、1月の史上最高値から金を保有し続けている人は、ここまでの試算とは逆に、約22%の含み損を抱えたままという計算になります。ドル建て換算で100万円分を最高値付近で購入していた場合、いまの評価額はおよそ78万円です(こちらもドル建て価格の変動のみを反映した概算で、為替変動は含んでいません)。金は「下がらない資産」ではなく、株式と同じかそれ以上に大きく動く資産だという点は、繰り返し強調しておきたいところです。
なお、株式市場全体は堅調です。S&P500は直近3週連続で週間プラスとなっており、史上最高値圏での推移が続いています。株式が崩れていないなかで金だけが金利観測を材料に上下する、という今回のような局面では、「金がニュースになっているから自分のオルカン・S&P500も危ない」と短絡的に結びつけないことが大切です。両者は別の資産クラスとして、別々の理由で動いています。
今すぐできる4つのアクション
まとめ: 金は「戻している」が史上最高値からはまだ遠い、次の焦点はジャクソンホール
- 「金がまた上がっている」という見出しだけで判断すると、1月の史上最高値からまだ2割安いという実態を見落としやすい。上昇局面のニュースほど、直近ピークからの距離もあわせて確認する習慣が有効
- 9月FOMCの利上げ観測は1週間強のあいだに何度も上下しながら後退した(CME FedWatchベースで45%→69%・算出元により幅あり)。単発の指標だけで説明せず、雇用統計・CPI・PPIが積み重なった結果として捉えることが大切
- 次の材料は8月27〜29日のジャクソンホール会議。新FRB議長ケビン・ウォーシュ氏にとって初の基調講演が8月28日に予定されており、金利観測が再び大きく動く可能性がある
- 純金積立(現物の地金)はNISA対象外で課税口座での保有になるが、1540のような国内の金ETFはNISA成長投資枠の対象商品に含まれている(つみたて投資枠は対象外)。どちらの方法かで非課税枠が使えるかが変わる点を先に確認しておく
- S&P500は3週連続の週間プラスで史上最高値圏を維持しており、株式が崩れていないなかで金だけが金利観測を材料に独自に動いている。「金のニュース=株式も危ない」と短絡的に結びつけないことが大切
金価格のニュースは「上がった」「下がった」という結果だけが目立ちますが、今回のように背景を追っていくと、9月FOMCの利上げ観測、そしてジャクソンホール会議という具体的な材料が見えてきます。オルカン・S&P500だけに投資している人にとっては直接の影響はなくても、金利観測という同じ材料が、いずれ株式市場にも波及してくることがあります。
PFWiseのポートフォリオ診断では、株式・金・現金といった資産クラスごとの構成比を確認できます。金を保有している人もしていない人も、自分の資産全体が金利や物価のニュースに対してどう配分されているかを、この機会に一度確認してみることをおすすめします。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい
中野晴啓
金のようなサテライト資産を検討する前に、まずコアとなるNISA積立商品の選び方を整理しておきたい人へ。長期保有に耐えるファンドを絞り込む視点が身につきます。
ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第13版)
バートン・マルキール
金利や金価格のニュースに一喜一憂しそうになったときに読み返したい古典。なぜインデックス投資を「核」に据えるのが合理的なのか、歴史とデータで検証しています。
通勤中に投資本を「聴く」という選択肢
Amazonが運営するオーディオブックサービスAudibleは30日間無料体験可能。紹介した投資本の多くがラインナップにあり、通勤・家事・運動中のスキマ時間にインプットできます。体験期間中に解約すれば料金は発生しません。
免責事項
※金(ゴールド)価格(2026年8月17日時点1トロイオンス4,377.89ドル・日次+0.05%・月次+9.23%・年次+31.37%)、史上最高値(2026年1月・5,608.35ドル)は、Trading Economics「Gold - Price」(tradingeconomics.com、2026年8月17日時点)にもとづく市場データです。史上最高値レンジ(5,589〜5,608ドル・2026年1月29日)は、複数の価格フィード(日中高値ベース)の分布にもとづく表記です。史上最高値からの下落率(現在時点で約22%)は、これらの実測値をもとに本記事で計算した概算値です。2026年6月24日には年初来安値3,959.33ドル(史上最高値比約−29.4%)をつけており、これはWorld Gold Council「Gold Mid-Year Outlook 2026」(spot goldが6月24日に日中安値3,959.33ドルに達したとの記載)にもとづきます。同日の終値ベースの下落については、CNBC「Gold hits over seven-month low as dollar firms, rate hike bets rise」(2026年6月24日付、スポット価格3,981.21ドル・先物終値4,008.80ドルと報道)も参照しています。
※9月15〜16日開催のFOMC(金利決定は16日)における政策金利据え置き予想(CME FedWatchベースで8月6日45%→8月7日60%→8月11日52%程度→8月12日60%前後→8月14日69%と推移したとみられる)は、CNBC「Odds the Fed will hike in September tumble following big July jobs miss」(2026年8月7日付)、7月の米雇用統計にもとづく市場報道を整理したものです(詳細な日米市場の反応は2026年8月14日の別記事で扱っています)。算出元・時点によって具体的な数値の水準は異なるため、本記事では特定のパーセンテージを断定的な事実としては示していません。市場の織り込みは日々変動し、実際の結果は本記事の記述と異なる可能性があります。8月13日発表の7月分PPI(前月比0.0%・市場予想+0.2%を下回る)は米労働省労働統計局(BLS)発表にもとづく市場報道によります。
※ジャクソンホール会議の日程(2026年8月27〜29日)、テーマ(「金融イノベーション: 決済と政策への含意」)、FRB議長ケビン・ウォーシュ氏(2026年5月22日就任)の基調講演予定(8月28日)は、複数の市場関連報道にもとづく情報です。講演の具体的な内容は本記事執筆時点では未発表であり、本記事は内容を予測するものではありません。
※S&P500(2026年8月14日終値7,785.76・直近3週連続の週間プラス・史上最高値圏で推移)は、2026年8月時点の市場報道にもとづく概説です。
※オルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))・S&P500がGICS(世界産業分類基準)の株式セクターのみで構成され金(ゴールド)等の商品(コモディティ)を含まないことは、両指数の公式な設計にもとづく一般的な業界知識です。
※純金積立(現物の地金)がNISA対象外で譲渡所得(総合課税)扱いであること、国内の純金上場信託(1540)がNISA成長投資枠の対象商品に含まれること(つみたて投資枠は対象外)、金ETFが株式と同じ申告分離課税であることは、証券会社・運用会社の公式商品説明にもとづく一般的な制度情報です。具体的な対象区分は購入時点の各社商品説明で必ずご確認ください。
※記事内の金額試算(100万円・毎月3万円のポートフォリオのうち5%・10%を金に配分した場合の増減額、史上最高値付近で購入した場合の現在評価額)は、記載した騰落率・下落率のみを反映した簡易な仮定計算であり、いずれもドル建て価格の変動のみを反映しています。為替変動・売買手数料・税金・信託報酬・スプレッドは考慮していません。実際の円建て損益とは異なります。
※冒頭「最新情報(8月23日追記)」の金価格(1トロイオンス4,602.40ドル・前日比+84.20ドル・+1.86%)は、Kitco「Gold Price Today」(kitco.com、2026年8月23日8:39ニューヨーク時間時点の気配値)にもとづきます。8月17日時点の価格からの上昇率(約+5.1%)、史上最高値からの下落幅(約18%)は、この実測値と本文記載の既存データをもとに本記事で計算した概算値です。
※「金利が上がると金を持つ機会損失が大きくなり金利上昇は金にとってマイナスに働きやすい」といった説明は、一般的に紹介される金融市場の考え方にもとづく概説であり、金融市場の反応を確定的に予測するものではありません。金を保有することで得られる分散効果・インフレヘッジ効果を保証するものでもありません。
※過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・個別銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
※本記事はPFWiseの運営者が執筆しており、個人的な見解を含みます。書籍リンクはAmazonアソシエイトのアフィリエイトリンクです。