著者: Koki Riho(PortfolioWise 開発者・運営者)
積立の人のための決算の読み方。『予想超えの企業84%』と『上振れ幅+2.6%』は別の物差し【S&P500・発表済み9%・FactSet 10/16付】
投資初心者向け。FactSetの2026年10月16日付の集計で、S&P500の7〜9月期決算を発表済みの企業は9%です。そのうち84%が1株利益で予想を上回り(予想超えの企業)、上振れ幅は合計で+2.6%でした。「割合」と「幅」の違い、予想を含む増益率29.0%、予想PER19.0の100万円換算(式つき)、決算前後の株価の平均変化、決算の利益と基準価額の関係を、数字の測り方から確かめます。
「予想を上回った企業が8割超」は、何を測った数字なのか
S&P500の7〜9月期決算が始まり、FactSetの集計では、発表済みの企業の84%が1株利益で予想を上回りました。S&P500は、米国を代表する500社の株価指数です。7〜9月期は、1年を3か月ずつに分けた3番目の期間(2026年の第3四半期)です。
NISAでオルカンやS&P500を積み立てているあなたも、「予想を上回った企業が8割超」のような見出しを見かけたかもしれません。その数字が何を測っていて、何を測っていないのかを、一度確かめてみませんか。
投資初心者の方にも分かるように、この記事では、FactSetの2026年10月16日付のレポートを読みます。見るのは、決算シーズン序盤の通信簿にあたる5つの数字です。予想を上回った割合・上振れ幅・増益率・予想PER・決算前後の株価が、それぞれ何を測っているかを確かめます。
この記事の前提
私はポートフォリオ管理ツールPFWiseの運営者で、後半で自分のサービスにも少し触れます。特定の銘柄の売買や、積立額の変更は勧めません。数字は、2026年10月21日(水)朝(日本時間)に確認しました。決算の集計は、金融データを提供するFactSet社の、2026年10月16日付のレポートです。その後に発表された決算は含まれていません。FactSetは、10月19日の週(この記事を書いた時点で進行中の週)に79社が発表する予定だと書いています。FactSetの1系統の集計で、ほかの会社の集計とは照合できていません。
84%と+2.6%は、別の質問に答える数字
FactSetは、発表済みの企業(9%)の1株利益を、2つの物差しで集計しています。1つ目は「何社が予想を上回ったか」という割合で、84%でした。2つ目は「合計でどれだけ上回ったか」という幅で、+2.6%でした。
たとえば(説明用の仮の数字です)、2社とも予想を1%だけ上回ったとします。割合は100%ですが、上振れ幅は1%です。社数で数えるのか、大きさで数えるのかの違いです。過去の平均と並べると、次のとおりです。「今回」は発表済みの9%の結果で、平均は500社すべての実績です。
| 1株利益(FactSetの集計、2026年10月16日付) | 今回(発表済みの9%) | 5年平均 | 10年平均 |
|---|---|---|---|
| 予想を上回った企業の割合 | 84% | 78% | 77% |
| 合計での上振れ幅 | +2.6% | +7.5% | +8.0% |
FactSetは、序盤のようすを「予想に対して、まちまちな出だし」と書いています。割合は最近の平均より高く、幅は最近の平均より小さいと説明しています。
ただし、この表の「今回」と平均は、同じ条件の比較ではありません。FactSetは、過去の平均は500社すべての実績だと注記しています。この時点までに発表した企業の実績ではありません。顔ぶれの違う9%と500社全体を、単純に並べて比べることはできません。「過去平均より小さい値で始まっている」と数字をそのまま読むことはできても、「今期は例年より弱い」と結論することはできません。
増益率29.0%は「ブレンド」で、確定した数字ではない
FactSetは、7〜9月期の増益率を29.0%としています。これは、発表済みの9%の実績と、未発表の企業の予想を合わせたブレンドの値です。10月16日付の版によると、その前の週の集計では29.4%でした。
FactSetは、増益率への寄与(増益率を押し上げる大きさ)がもっとも大きい2社を挙げています。マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)とNVIDIA(エヌビディア)です。この2社を除くと、増益率は29.0%から20.0%に下がります。29.0%という指数全体の数字は、一部の会社の影響が大きい数字です。
この2社は、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、S&P500ファンド)の組入上位10銘柄にも入っています。組入上位10銘柄は、ファンドが持つ株のうち、組入比率が大きい上位10銘柄です。同じ会社でも、種類の違う株は別の銘柄として数えます。組入比率は、ファンド全体の金額に占める割合です。数字は、三菱UFJアセットマネジメントの月次レポート(2026年9月30日現在)の値です。通称オルカンの全世界株式(オール・カントリー)でも、NVIDIAが1位、マイクロンが10位です。
| ファンド | NVIDIA | マイクロン | 2社の合計 | 100万円のうち2社に当たる分 |
|---|---|---|---|---|
| S&P500ファンド | 8.3%(1位) | 1.8%(9位) | 10.1% | 1,000,000円 × (0.083 + 0.018) = 101,000円 |
増益率(FactSet・10月16日付)と組入比率(9月30日現在)は、出所も日付も別の数字です。FactSetの集計の対象はS&P500の500社で、オルカンが持つ全世界の株の利益ではありません。
株価は「今後12か月の予想利益」の何年分か(予想PER19.0)
FactSetの集計では、S&P500の今後12か月の予想PERは19.0で、9月30日時点も19.0でした。5年平均は19.8、10年平均は19.1です。
100万円分のS&P500を持つとき、その持ち分に対応する利益の見込みは、益利回りを掛けて出せます。今回の予想PER、5年平均、10年平均で同じ計算をすると、次のとおりです。
| PER | 式 | 100万円分に対応する利益 | 益利回り |
|---|---|---|---|
| 19.0(今回) | 1,000,000円 ÷ 19.0 | 52,632円 | 5.26% |
| 19.8(5年平均) | 1,000,000円 ÷ 19.8 | 50,505円 | 5.05% |
| 19.1(10年平均) | 1,000,000円 ÷ 19.1 | 52,356円 | 5.24% |
52,632円は、今後12か月の予想利益のうち、100万円分の持ち分に対応する額です。投資家が受け取る金額ではありません。為替・信託報酬・配当・税は含めない、比率を当てはめただけの計算です。
同じ株価でも、割る利益が予想か実績かで、PERが変わります。FactSetの過去12か月の実績PERは26.0で、5年平均は24.4です。予想PERは5年平均・10年平均のどちらよりも小さい値です。実績PERは5年平均より大きい値です。平均との並び方が逆になります。PERを読むときは、どの利益で割った倍率かを先に確かめる必要があります。
決算前後の株価は、予想を上回った企業で平均-0.2%だった
FactSetは、決算の発表日の2日前から2日後までの株価の平均変化も集計しています。集計の対象は、発表済みの9%だけです。
| 発表済みの9%の企業(1株利益) | 7〜9月期(10月16日付) | 5年平均(過去5年・同じ2日前〜2日後) |
|---|---|---|
| 予想を上回った企業 | -0.2% | +0.9% |
| 予想を下回った企業 | -2.2% | -3.1% |
発表済みの9%のうち、予想を上回った企業の平均では、決算の2日前から2日後までに株価がわずかに下がっています(-0.2%)。5年平均の+0.9%は、過去5年に予想を上回った企業の平均で、序盤の企業とは顔ぶれが違います。決算が予想を上回っても、株価が上がるとは限らない、という例です。これは企業ごとの平均で、個別の会社の動きは、この平均と違うことがあります。
決算が予想を上回ると、自分の積立の基準価額はどうなる?
S&P500ファンドの請求目論見書は、ファンドの詳しい説明書です。外国で取引される株は、原則として直近の最終相場で評価すると定めています。外貨建ての資産は、原則として為替(対顧客電信売買相場の仲値)で円に直すと定めています。仲値は、銀行が顧客に示す売りレートと買いレートの中間の値です。
基準価額の記事 は、前日比を30営業日(2026年9月2日〜10月19日)で調べました。S&P500ファンドの前日比は、前営業日の米国の終値と日本時間10時のドル円を掛け合わせた値に近い大きさでした。運営者の計算で、ドル円はCNBC 1系統の概算です。過去のデータなので、この先も同じとは限りません。
つまり、決算で利益が予想を上回っても、利益の数字が自動で基準価額を押し上げるわけではありません。反映されるのは、その会社の株価が動いた分と、為替が動いた分です。
| 順番 | 起きること | 基準価額への入り方 |
|---|---|---|
| 1 | 会社が決算を発表する | 利益の数字は、基準価額の計算に直接は使われません |
| 2 | その会社の株価が動く(上がる・下がる・ほぼ動かない) | 株価の変化に、ファンドの中での組入比率を掛けた分だけ、評価額が変わります |
| 3 | ドル円が動く | ドル建ての評価額を円に直すレートが変わります |
1社の株価の変化が基準価額に与える大きさは、組入比率に変化率を掛けた計算になります。
たとえば(説明用の仮の数字です)。100万円分のS&P500ファンドで、組入比率8.3%のNVIDIAの株価が1%動いたとします。ほかは動かず、為替も動かないと仮定すると、評価額は 1,000,000円 × 8.3% × 1% = 830円動く計算です。比率は四捨五入した値なので、約830円です。
MetaとTeslaの決算日と、2社の組入比率は、 2社の決算と構成比を調べた記事 に書いたので、ここでは繰り返しません。
来週(10月27日〜30日)の日程は、日付だけ
今週は、10月21日(水・米国東部時間)の取引終了後に、MetaとTeslaが決算を発表予定です。日付だけを書き、結果や方向の予測は書きません。
| 日付 | 予定 | 確認した出所 |
|---|---|---|
| 10月27日(火)〜28日(水) | 米国のFOMC(米連邦公開市場委員会。米国の政策金利を決める会合) | FRB(米連邦準備制度理事会)の公式日程 |
| 10月28日(水)・米国東部時間の取引終了後 | AlphabetとMicrosoftの決算予定 | Nasdaq公式の決算予定表 |
| 10月29日(木)・30日(金) | 日本銀行(日銀)の金融政策決定会合 | 日銀の公式日程(英語版) |
| 10月29日(木)・米国東部時間8時30分 | 米国の7〜9月期GDP速報(GDPは国内総生産。国の経済の大きさを測る数字) | 米商務省経済分析局(BEA)の公式日程 |
| 10月29日(木)・米国東部時間の取引終了後 | Amazonの決算予定 | Nasdaq公式の決算予定表 |
この記事で確かめていないこと
- 数字が動いた理由と、これからの方向は調べていません。この記事は、見出しの数字が何を測っているかを確かめたもので、予想や売買の助言ではありません。
- MetaとTeslaの決算日は、2社の決算と構成比を調べた記事で確かめた日付です。ほかの会社の決算日は、Nasdaq公式の決算予定表の記載で、各社のIR(投資家向け情報のページ)では確認できていません。
決算の見出しを読むときの3つの確認
まとめ
- 割合と幅は別の物差しです。FactSetの10月16日付の集計(1系統)にある発表済み9%の序盤の値は、500社すべての過去平均とは単純に比べられません
- 増益率と予想PERは、予想を含む数字です。確定した利益でも、売買のタイミングを示す数字でもありません
- 決算の結果が基準価額に入るのは、組み入れた株の値段と為替が動いた分です。決算の利益の数字は、計算に直接は使われません。
私は、見出しの数字は何を測っているかを一度確かめてから読むのが、1日の値動きに一喜一憂しないために役立つと考えます。84%は社数の割合、+2.6%は合計の大きさで、同じ決算から出た別の数字です。予想を上回った企業の株価が、序盤の平均で-0.2%だったように、見出しの数字と株価の動きは同じ向きになるとは限りません。これは一般論で、収入・投資期間・生活費の余裕など個々の状況で変わります。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第13版)
バートン・マルキール
なぜインデックス投資が合理的かを、歴史と統計で検証した古典です。決算シーズンの見出しとは別に、指数を持つ意味を長い目で確かめたい人に向いています。
JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則
ニック・マジューリ
つみたて投資の根拠を、データ志向で示した本です。積立を続ける根拠を、数字で確かめたい人に向いています。
通勤中に投資本を「聴く」という選択肢
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参考資料
-
FactSet「Earnings Insight」(2026年10月16日付、36ページのPDF。p.3は2社を除いた増益率、p.7〜8は割合・幅・ブレンドの増益率、p.9は決算前後の株価、p.14はPER)
https://advantage.factset.com/hubfs/Website/Resources%20Section/Research%20Desk/Earnings%20Insight/EarningsInsight_101626.pdf -
FactSet Insight「S&P 500 Earnings Season Update: October 16, 2026」(上のレポートと同じ文章を含むウェブ記事)
https://insight.factset.com/sp-500-earnings-season-update-october-16-2026 -
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 月次レポート」(2026年9月30日現在。組入上位10銘柄のNVIDIAは8.3%、マイクロンは1.8%)
https://www.am.mufg.jp/pdf/geppou/253266/253266_202609.pdf -
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 月次レポート」(2026年9月30日現在。組入上位10銘柄のNVIDIAは1位、マイクロンは10位)
https://www.am.mufg.jp/pdf/geppou/253425/253425_202609.pdf -
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 請求目論見書」(2026年7月25日使用開始。p.33に、外国で取引される株は原則として直近の最終相場で評価し、外貨建て資産は原則として対顧客電信売買相場の仲値で円換算すると書かれています)
https://www.am.mufg.jp/pdf/seimokuromi/253266/253266_20260725.pdf -
FRB(米連邦準備制度理事会)「Meeting calendars and information」(2026年のFOMC: 10月27〜28日)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm -
日本銀行「Monetary Policy Meetings」(英語版。2026年10月29日・30日)
https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/index.htm -
米商務省経済分析局(BEA)「Release Schedule」(10月29日 8:30 AM、2026年7〜9月期のGDP速報値)
https://www.bea.gov/news/schedule -
Nasdaq「Earnings Calendar」(API。10月21日・28日・29日の分を2026年10月21日朝に取得。User-Agentが必要。いずれもJSON形式のデータです)
https://api.nasdaq.com/api/calendar/earnings?date=2026-10-21
https://api.nasdaq.com/api/calendar/earnings?date=2026-10-28
https://api.nasdaq.com/api/calendar/earnings?date=2026-10-29
免責事項
※記事の数字は2026年10月21日(水)朝(日本時間)に確認したもので、その後の動きは反映していません。
※決算の集計は、FactSetの「Earnings Insight」(2026年10月16日付)の値です。FactSetの1系統の集計で、ほかの会社の集計とは照合していません。発表済みは、S&P500の企業の9%(10月16日付)で、それ以降に発表された決算は含まれません。
※増益率29.0%は、発表済みの実績と未発表の予想を合わせたブレンドの値で、見込みを含みます。予想PERは、FactSetが集計した今後12か月の予想利益にもとづく倍率です。
※100万円の金額は、益利回り(1 ÷ PER)を100万円に掛けた仮の計算(1,000,000円 ÷ 19.0 = 52,632円、1,000,000円 ÷ 19.8 = 50,505円、1,000,000円 ÷ 19.1 = 52,356円)で、会社の利益の見込みを表します。投資家が受け取る金額ではなく、為替・信託報酬・配当・税は含みません。
※ファンドの組入比率は、三菱UFJアセットマネジメントの月次レポート(2026年9月30日現在)の値で、小数第1位に四捨五入されています。101,000円は、四捨五入した比率の合計(S&P500ファンドの8.3% + 1.8%)に100万円を掛けた値です。830円の例は、四捨五入した比率8.3%に、仮の1%の変化率を掛けた計算です。FactSetの集計(10月16日付)とは、出所も日付も別です。
※来週の日程は、FOMCがFRB、日銀会合が日銀(英語版)、米国のGDP速報が米商務省経済分析局(BEA)の公式日程、決算日がNasdaq公式の決算予定表で、2026年10月21日朝に確認した予定です。変更されることがあり、各社のIRでは確認していません。
※基準価額の仕組みは、S&P500ファンドの請求目論見書(2026年7月25日使用開始)の評価ルールと、基準価額の記事(30営業日の確認。ドル円はCNBCの1系統による概算)、2社の決算と構成比を調べた記事の内容にもとづきます。
※過去の実績や予想は、将来の運用成果を保証するものではありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・個別銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
※本記事はPFWiseの運営者が執筆しており、個人的な見解を含みます。書籍リンクはAmazonアソシエイトのアフィリエイトリンクです。Audibleの案内も、同じくAmazonアソシエイトのリンクです。