円安159円台、原因は原油高と貿易赤字懸念——日本の長期金利2.89%も追い風に。あなたのオルカン/S&P500への影響は?【2026年8月25日】
投資初心者向け。2026年8月25日、ドル円は159円台。原油高による貿易赤字懸念と日本の長期金利2.89%(8/18に一時2.945%・30年ぶり高水準)が背景。円安のオルカン・S&P500への影響を金額例で解説。
円安159円台——原油高と日本の長期金利2.89%が背景。あなたのオルカン・S&P500への影響は?
投資初心者でも分かるように解説します。
(はじめにお断りしておくと、私はポートフォリオ管理ツールPFWiseの運営者です。記事の後半で自分のサービスにも触れます。)
25日午前の東京市場、ドル円は朝方の159.00円台から午前中に159.33円付近まで水準を切り上げています。前日24日は東京市場で158円71銭まで下げたあと、ニューヨーク市場では159.285円まで買われる場面もあり、159.10円前後で取引を終えました。じつは12日前にも、同じ「159円」がニュースになりました。ただし向きは逆です。8月13日は高市政権が日銀の早期利上げを支持していると報じられ、円買いが進んで一時159円18銭まで円高方向に振れました。今回はその逆で、円安方向から159円台に乗せています。同じ数字でも、動いた向きも理由もまったく違うわけです。今日は何が起きているのかを整理します。
円安の理由①: ニューヨーク原油が高値圏、日本の貿易赤字拡大が意識されている
1つ目の理由は原油価格です。ニューヨーク原油(WTI、米国産の代表的な原油の指標)は2026年8月24日に1バレル85.06ドルで取引を終えました(前営業日比-0.96ドル・-1.12%、前週までの急伸からの利益確定売りが優勢でした)。直近1か月では最高87.69ドル・最安74.24ドルのレンジで推移しており、下落後も85ドル台を維持しています。25日の東京市場では、この原油が時間外取引(通常の取引時間の前後に行われる売買)でも高い水準を保っていることが話題になっています。
原油高が続くと、日本の貿易赤字が拡大するとの見方につながりやすくなります。それが円を売る材料として意識される、という理屈です。もちろん、この流れがいつも一直線に進むわけではありません。それでも今日の東京市場では、円安の理由の1つとしてこの理屈が意識されています。
円安の理由②: 日本の長期金利が2.89%前後の高水準(8月18日に30年ぶりの高さ)
2つ目の理由は、日本の長期金利(新発10年国債利回り)です。8月25日時点でおよそ2.89%前後にあり、8月18日には一時2.945%まで上昇し、1996年9月以来およそ30年ぶりの高水準を記録しました。
日本の長期金利がここまで上がっている背景には、複数の要因が重なっています。主な要因は3つです。日銀が早期に追加利上げに動くのではないかという観測。高市政権が歳出を増やす方向の財政運営を進めていることへの財政悪化懸念。そして中東情勢の悪化に伴う原油高とインフレへの警戒です。この3つが同時に、国債を売る(利回りが上がる)圧力になっていると報じられています。つまり、理由①の原油高は、理由②の長期金利上昇にも間接的につながっている構造です。
ここで疑問が湧くかもしれません。金利が上がるなら、ふつうその国の通貨は買われやすくなるのではないか——実際、当サイトが8月13日にお伝えしたとおり、日銀の利上げは一般に円高要因とされます。ただし今回の金利上昇は性質が違います。3つの要因のうち後の2つ、つまり財政悪化懸念とインフレへの警戒が主導する金利上昇は、「日本の財政やインフレへの信認が揺らいでいる」というサインとして受け止められ、国債と通貨が同時に売られる方向に働くことがあります。今日の東京市場では、この見方が円を圧迫する材料の1つとして意識されています。
円安が進むとどうなる? あなたへの影響は「痛み」と「恩恵」の両方
円安と聞くと「良いこと」「悪いこと」のどちらか一方をイメージしがちですが、実際には家計への影響とオルカン・S&P500積立への影響で、プラスとマイナスが同時に発生します。
家計への影響(痛みの側面): 円安が進むと、輸入に頼っているガソリン・電気代・食料品などの価格が上がりやすくなります。例えば、ガソリン1リットルあたりの店頭価格が数円上がるだけでも、月々の給油代は積み重なっていきます。原油高と円安が重なっている今回は、この「輸入インフレ」の圧力が強まりやすい局面といえます。物価上昇が続けば、日銀がさらに利上げを迫られやすくなり、理由②で説明した長期金利の上昇にもつながっていきます。
オルカン・S&P500積立への影響(恩恵の側面): 一方で、オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)やeMAXIS Slim米国株式(S&P500)のように外国株式に投資するファンドもあります。これらを為替ヘッジなしで保有している場合、円安はその評価額を円換算で押し上げる効果があります。
オルカン・S&P500への影響を具体的な金額で試算する
為替の影響を実感するために、簡単な試算をしてみます。ドル円が159円から160円へ、1円(約0.63%)円安に動いたとします。
オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)は、運用会社の月次レポート(2026年7月31日基準)によればアメリカの構成比率が63.1%です。為替以外の株価変動を考慮しない単純化した試算をすると、1円の円安(約0.63%)がアメリカ部分だけに影響すると仮定した場合、63.1%×0.63%≒0.4%です。オルカンを100万円分保有している場合、この試算では約4,000円が為替要因による評価額の押し上げ分に相当します。
一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はアメリカに100%投資するファンドです。同じ1円の円安(約0.63%)がそのまま評価額に反映されると仮定すると、100万円分保有している場合は約6,300円が押し上げ分に相当します。オルカンよりも為替の影響を受けやすい構造だとわかります。
例えば、毎月3万円をオルカンに積み立てて2年間続けている人(積立元本72万円)であれば、どう考えればよいでしょうか。仮に評価額がちょうど72万円だとすると、同じ1円の円安(約0.63%)によるアメリカ部分への影響は、72万円×63.1%×0.63%≒約2,900円です。積立額そのものを増減させる必要はなく、「今の評価額に対して為替がこの程度効いている」という感覚だけ持っておけば十分です。
もちろん実際の評価額は、為替だけでなく現地の株価そのものの変動と合成されて決まるため、この試算どおりに動くわけではありません。あくまで「為替だけを取り出すとこの程度の影響がある」という感覚をつかむための単純化した計算です。
今週のもう1つの注目点: ジャクソンホール会議(8月27〜29日)
今週はもう一つ、為替・金利の両方に影響しうるイベントが控えています。8月27〜29日に米ワイオミング州で開催されるジャクソンホール会議です。5月に就任したばかりのウォーシュFRB議長が、28日に議長として初めての基調講演を行う予定です。
ウォーシュ議長の講演内容はまだ「白紙」
ウォーシュ議長は7月29日のFOMC後記者会見で、講演内容は「白紙の状態」だとしています。生産性や人口動態といった大局的なテーマも扱いたいとしつつ、9〜12月の金融政策運営を占う従来型の講演になる可能性も残す、と述べています。つまり講演の性格や、目先の利上げ・利下げ判断に触れるかどうかは、本人もまだ決めていないということです。
市場では、2026年8月20日時点のCME FedWatch・Investing.com Fed Rate Monitor等(将来の金利動向を市場参加者の取引から算出するツール)で、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ確率がおよそ3割程度と見られています(算出時点・算出方法により2〜3割台で幅があります)。この講演内容が、金融政策の方向性を占う手がかりになる可能性があります。講演の前後は、為替・株式・金利のいずれも値動きが大きくなりやすいタイミングです。
重要なのは、結果を事前に断定できないという点です。今回伝えたいのは「円安が進む」「利上げがある」という予想ではなく、複数の要因が重なって、あなたのオルカン・S&P500・家計の3つに同時に影響しうる構造になっているという事実です。
今すぐできる4つのアクション
まとめ: 円安159円台の理由は原油高と長期金利上昇。オルカン・S&P500には「痛み」と「恩恵」が同時に来る
- 2026年8月25日午前のドル円は朝方159.00円台から159.33円付近まで上昇。円安の理由は①原油高による貿易赤字拡大観測、②日本の長期金利2.89%前後(8月18日に一時2.945%、およそ30年ぶりの高さ)の2つ
- 日本の長期金利上昇の背景には日銀の早期利上げ観測・高市政権の財政拡張懸念・中東情勢に伴う原油高とインフレ懸念がある。財政・インフレ信認への懸念が主導する金利上昇は、通常の「利上げ=通貨高」とは逆に国債・通貨が同時に売られる要因になりうる
- 円安は輸入品の値上がりという家計への痛みがある一方、オルカン・S&P500のような為替ヘッジなしファンドの円換算評価額を押し上げる効果もある(概算でオルカン100万円なら1円の円安につき約4,000円、S&P500なら約6,300円)
- 8月27〜29日はジャクソンホール会議。5月就任のウォーシュFRB議長が28日に初講演を予定し、金融政策の方向性を占う手がかりになる可能性がある
- 結果を事前に断定はできないが、為替・金利・家計・ポートフォリオが同時に連動しうる構造にあることは、積立を続ける前提として知っておく価値がある
「円安は悪いこと」というイメージだけで捉えると、見落としがちなことがあります。それは、NISAで外国株式に積み立てている自分自身も、円安の恩恵を受けている側だということです。もちろん、輸入品の値上がりという痛みは実際にあります。ただ資産形成の観点では、円安・円高のどちらに動いても一喜一憂しないことが大切です。自分がどちらの影響をどれだけ受ける構造になっているかを知っておくことが、値動きの大きい週を乗り切る助けになります。
PFWiseのポートフォリオ診断では、保有資産の通貨構成や為替ヘッジの有無を踏まえた分析が可能です。為替が大きく動く週こそ、自分のポートフォリオが為替からどれだけの影響を受けやすい構造なのかを一度確認してみることをおすすめします。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい
中野晴啓
為替が動く局面でも、つみたて枠でどんな商品を選び、どう向き合うべきかの土台を整理できる1冊。円安・円高のニュースに振り回されそうになったときの判断軸になります。
ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第13版)
バートン・マルキール
「なぜインデックス投資が合理的か」を歴史と統計で徹底検証した古典的名著。為替のニュースで一喜一憂しそうになったときこそ、指数投資の考え方の土台に立ち返る助けになります。
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免責事項
※2026年8月25日午前の東京市場におけるドル円相場(朝方159.00円台〜午前159.33円付近)は、外為どっとコム マネ育チャンネルの同日付け報道にもとづきます。前日24日の値動き(東京市場158円71銭・ニューヨーク市場159.285円・159.10円前後で終了)、および円安要因(ニューヨーク原油の高値圏推移・日本の貿易赤字拡大観測)は、FISCO(東京為替)およびみんかぶFX/為替の同日付け報道にもとづきます。8月13日のドル円が高市政権の日銀早期利上げ支持報道を受けて一時159円18銭まで円高方向に振れたことは、当サイトの過去記事(2026年8月13日付)にもとづきます。
※ニューヨーク原油(WTI)の価格(2026年8月24日終値85.06ドル・前営業日比-0.96ドル、直近1か月のレンジ高値87.69ドル・安値74.24ドル)は、株探およびInvesting.comの報道にもとづきます。
※日本の新発10年国債利回りが2026年8月18日に一時2.945%まで上昇し1996年9月以来およそ30年ぶりの高水準となったこと、および同利回り上昇の背景(日銀の早期利上げ観測・高市政権の拡張的な財政運営への懸念・中東情勢に伴う原油高とインフレ懸念)は、日本経済新聞の同時期の報道にもとづきます。2026年8月25日時点の同利回り(2.89%前後)は、みんかぶFX/為替の報道にもとづきます。
※オルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))の国別構成比率(アメリカ63.1%)は、三菱UFJアセットマネジメントが公表する月次レポート(emaxis.am.mufg.jp、2026年7月31日基準)にもとづきます。
※記事内の金額試算(オルカン・S&P500の為替1円あたりの評価額影響)は、記載した国別構成比率と為替変動率をそのまま乗じた簡易な仮定計算であり、現地株価の変動・信託報酬・スプレッド(売値と買値の差。取引コストの一種)等は考慮していません。実際の評価額の変動とは異なります。
※ジャクソンホール会議の開催日程(2026年8月27〜29日)、2026年のテーマ「金融イノベーション: 決済と政策への含意」、参加規模(例年約120人・これまでに70カ国が参加)は、主催者であるカンザスシティ連邦準備銀行の公式FAQページにもとづきます。ウォーシュFRB議長(2026年5月22日就任)による議長就任後初講演(8月28日予定)は、Regards of Wallstreet等の市場報道にもとづきます。7月29日のFOMC後記者会見での発言内容(「白紙の状態」等)は、FRB公式記者会見録にもとづきます。2026年8月20日時点の9月FOMC利上げ確率(およそ3割程度、算出方法により2〜3割台の幅)は、CME FedWatch・Investing.com Fed Rate Monitor等にもとづきます。
※「円安が進むと家計・ポートフォリオにどう影響しやすいか」といった説明は、一般的に紹介される為替・金融市場の考え方にもとづく概説であり、今後の為替・金利・株式市場の動きを確定的に予測するものではありません。
※過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・個別銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
※本記事はPFWiseの運営者が執筆しており、個人的な見解を含みます。書籍リンクはAmazonアソシエイトのアフィリエイトリンクです。