「オルカン高配当」9月30日設定。指数の銘柄は2,460→713、信託報酬は約2.9倍。あなたのオルカンとどう違う?【2026年8月27日】
投資初心者向け。9月30日設定の「オルカン高配当」はオルカンとは別指数の商品です。指数の銘柄は2,460から713、信託報酬は約2.9倍、配当利回りは3.27%。NISA成長投資枠での影響を100万円あたりの実額で解説。
投資初心者でも分かるように解説します。三菱UFJアセットマネジメントが2026年8月26日、『eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー)配当払出型/資産成長型〈愛称:オルカン高配当〉』を2026年9月30日(水)に設定すると発表しました。
「オルカン」と付いているので、いま積み立てているオルカンに配当が付いたもの、と読んでしまいそうになります。実際には連動する指数から違います。先に結論を書くと、手数料の面では、資産を増やしたいだけならオルカンを続けるほうが有利です。この新ファンドが候補になるのは、生活費として定期的な現金がほしい場合だと私は考えています。その根拠を、あなたが毎月買っているオルカンの中身と比べながら数字で確かめていきます。
まず一次資料で確認する、発表された事実
三菱UFJアセットマネジメントのプレスリリース(2026年8月26日)に書かれている内容を整理します。設定されるのは2本です。
- 『eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー)配当払出型〈愛称:オルカン高配当〉』
- 『eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー)資産成長型〈愛称:オルカン高配当〉』
2本とも「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス高配当利回り指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果をめざします」と書かれています。設定・運用開始はどちらも2026年9月30日(水)です。
費用は2本共通で、買うときにかかる購入時手数料と、解約するときに差し引かれる信託財産留保額(途中でやめる人が残る人に迷惑をかけないよう解約時に少し置いていくお金)は、いずれも「ありません」。信託報酬は純資産総額(そのファンドに集まっているお金の合計)が5,000億円未満の部分で年率0.1650%(税抜 年率0.15%)以内です。集まったお金が増えると料率は段階的に下がり、5,000億円以上1兆円未満の部分が0.1628%、1兆円以上の部分が0.1606%になります。
販売会社は、配当払出型がSBI証券・楽天証券・マネックス証券・スマートプラス(2026年9月30日より取扱開始)、資産成長型がSBI証券・楽天証券・マネックス証券と記載されています。NISAについては「NISAの成長投資枠の対象です(販売会社により取扱いが異なる場合があります)」とあり、つみたて投資枠については記載がありません。
※プレスリリースには「当ファンドの有価証券届出書を2026年8月26日(水)に関東財務局長に提出しておりますが、届出の効力は生じておりません。したがって、当該届出の効力が発生するまでに、当資料の記載内容が訂正される場合があります」と明記されています。本記事の数値も、正式な交付目論見書で変更される可能性があります。購入を検討する段階では、必ず販売会社が交付する最新の目論見書を確認してください。
「オルカン」と名前が付いていても、指数そのものが違う
「オルカン」という愛称で呼ばれてきたのは『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』です(オルカンとS&P500のどちらを積み立てるかで迷っている場合はこちらの比較記事もあわせてどうぞ)。連動先はMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)で、2026年7月末時点の構成銘柄数は2,460です。
今回の新ファンドが連動をめざすのは、その子ども側にあたる別の指数です。MSCIの指数ファクトシート(2026年7月31日時点)によると、MSCI ACWI高配当利回り指数の構成銘柄数は713。親指数の2,460から3割弱まで絞り込まれています。
絞り込みの基準は、プレスリリースにこう書かれています。親指数の中から「配当の持続性・成長性、財務品質、株価パフォーマンスなどのスクリーニングを経た銘柄のうち、配当利回りが親指数の1.3倍以上である銘柄が採用されます」。財務品質は自己資本利益率(ROE)、利益の安定性、負債比率等で評価すると注記されています。MSCI側の指数説明では、親指数からREIT(不動産投資信託)を除外したうえで選定するとされています。
銘柄数が減れば、1銘柄あたりの平均比率は上がります。MSCIの高配当利回り指数ファクトシートは両指数を並べて掲載しており、1銘柄あたりの平均比率はMSCI ACWIが0.04%、高配当利回り指数が0.14%です。ところが上位10銘柄の合計比率は逆転していて、MSCI ACWIが24.21%、高配当利回り指数が18.64%。オルカン側はエヌビディアやアップルのような巨大企業に比重が寄っているぶん、上位への集中度はむしろ高いのです。「銘柄数が3割弱に減る=一気に集中する」という単純な話ではありません。
上位10銘柄を並べると、重なりがゼロだと分かる
いちばん分かりやすいのが顔ぶれの比較です。どちらもMSCIのファクトシート(2026年7月31日時点、米ドルベース)から転記しています。
| 順位 | MSCI ACWI(オルカンの指数) | MSCI ACWI高配当利回り指数(新ファンドの指数) |
|---|---|---|
| 1 | エヌビディア 4.57% | エクソンモービル 2.95% |
| 2 | アップル 4.47% | ジョンソン・エンド・ジョンソン 2.82% |
| 3 | マイクロソフト 3.23% | アッヴィ 2.03% |
| 4 | アマゾン・ドット・コム 2.59% | ユナイテッドヘルス・グループ 1.72% |
| 5 | アルファベット(クラスA) 2.04% | シェブロン 1.66% |
| 6 | TSMC(台湾) 1.82% | コカ・コーラ 1.55% |
| 7 | ブロードコム 1.73% | プロクター・アンド・ギャンブル 1.53% |
| 8 | アルファベット(クラスC) 1.62% | ホーム・デポ 1.51% |
| 9 | メタ・プラットフォームズ 1.20% | メルク 1.47% |
| 10 | JPモルガン・チェース 0.93% | ロシュ・ホールディング(スイス) 1.40% |
| 上位10合計 | 24.21% | 18.64% |
上位10に共通する銘柄は1社もありません。オルカン側の上位を占めるエヌビディア・アップル・マイクロソフトは、高配当利回り指数の上位10銘柄には登場しません。採用条件が「配当利回りが親指数の1.3倍以上」である以上、配当をあまり出さない成長株は上位に来にくいしくみです。名前に「オルカン」と付いていても、実際に買っている会社の顔ぶれは入れ替わります。
セクター配分は、情報技術30.28%が5.47%まで下がる
業種ごとの比率を並べると、性格の違いがはっきりします。同じくMSCIのファクトシート(2026年7月31日時点)からの数値です。右端は、その指数に100万円を投じたときの業種ごとの金額イメージです。
※以下はいずれも指数の構成比です。実際のファンドの組入比率は、運用会社が公表する月次レポートの基準日時点の数値であり、指数の比率とは基準日のぶんだけずれます。オルカンの情報技術セクターも、ファンドの月次レポート(2026年4月30日基準)では28.7%と公表されており、本記事の指数ベース30.28%(2026年7月末)とは基準日と対象(ファンドの実際の組入か、指数の構成比か)が異なります。
| セクター | MSCI ACWI | 高配当利回り指数 | 100万円あたりの差 |
|---|---|---|---|
| 情報技術 | 30.28% | 5.47% | 30.3万円 → 5.5万円 |
| ヘルスケア | 8.39% | 18.69% | 8.4万円 → 18.7万円 |
| 金融 | 17.18% | 18.22% | 17.2万円 → 18.2万円 |
| 生活必需品 | 4.83% | 14.21% | 4.8万円 → 14.2万円 |
| 資本財 | 10.86% | 11.18% | 10.9万円 → 11.2万円 |
| エネルギー | 3.95% | 10.95% | 4.0万円 → 11.0万円 |
| 一般消費財 | 8.97% | 9.14% | 9.0万円 → 9.1万円 |
| 通信サービス | 7.87% | 3.90% | 7.9万円 → 3.9万円 |
| 公益 | 2.47% | 5.03% | 2.5万円 → 5.0万円 |
| 素材 | 3.56% | 2.81% | 3.6万円 → 2.8万円 |
| 不動産 | 1.63% | 0.40% | 1.6万円 → 0.4万円 |
不動産の行だけは、2つの指数で中身の性質が違います。MSCI ACWIの1.63%にはREIT(不動産投資信託)が含まれますが、高配当利回り指数は親指数からREITを除いたうえで銘柄を選ぶため、0.40%にREITは入っていません。
いちばん動くのが情報技術です。100万円あたりで見ると30.3万円分が5.5万円分になり、代わりにヘルスケアが8.4万円分から18.7万円分へ、生活必需品が4.8万円分から14.2万円分へ増えます。エネルギーも4.0万円分から11.0万円分に増えます。AI関連の値上がりを取りにいく組み合わせから、薬・日用品・石油といった配当の出やすい業種に軸足を移す形になります。
国別の顔ぶれも変わります。プレスリリースに載っている対象インデックスの国・地域別構成比率は次のとおりです(MSCI Inc.のデータを基に三菱UFJアセットマネジメントが作成、2026年5月末現在)。
- 米国 48.9% / 日本 8.1% / スイス 5.9% / イギリス 4.6% / フランス 3.7%
- 先進国あわせて 85.7%、新興国あわせて 14.3%
比較するときは基準日をそろえる必要があります。MSCIのファクトシートで2026年7月末にそろえると、米国比率はMSCI ACWIが63.55%、高配当利回り指数が51.93%です。同じ7月末で日本は5.05%と5.78%、イギリスは3.19%と5.43%。基準日をそろえても、高配当利回り指数のほうが米国への偏りが小さいという関係は変わりません。ただし比率そのものは指数の定期見直しや株価変動で動きます。高配当利回り指数の米国比率が2か月で48.9%から51.93%に振れている点は、頭に入れておいてください。
配当利回り3.27%は、100万円で年32,700円。ただし手取りではない
配当の出やすさを見ます。MSCIのファクトシート(2026年7月31日時点)の配当利回りは、MSCI ACWI高配当利回り指数が3.27%、MSCI ACWIが1.59%です。100万円分を持っていた場合、指数ベースで年32,700円と年15,900円、差は16,800円になります。
ここから何が引かれるかが肝心です。この3.27%は指数の数値で、信託報酬(年0.1650%)を引く前、投資先の国で配当にかかる税を引く前の値です。実際に手元に届く分配金は、これより小さくなります。
分配のタイミングも2本で違います。配当払出型は年4回(3・6・9・12月の各14日、休業日の場合は翌営業日)の決算時に分配し、「原則として、分配対象額のうち、経費等控除後の配当等収益の全額を分配します」と書かれています。初回決算日は2026年12月14日です。仮に指数の利回り3.27%がそのまま出たとすると、100万円あたり1回8,175円という単純計算になります(実際にはここから費用と税が引かれます)。
資産成長型は年1回(9月14日、休業日の場合は翌営業日)の決算です。「分配金額の決定にあたっては、信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします」と書かれており、初回決算日は2027年9月14日です。オルカンと同じように、受け取らずにファンドの中で回す設計に近いのはこちらです。
コストは約2.9倍。100万円で年1,072円台の差が毎年続く
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の信託報酬は年率0.05775%(税込)以内です。三菱UFJ国際投信(現・三菱UFJアセットマネジメント)が2023年8月に引き下げを発表し、2023年9月8日から適用されている水準で、楽天証券など販売会社のファンドページでも同じ数値が確認できます。
新ファンドの0.1650%以内と比べると約2.9倍です。100万円を1年持った場合、オルカンが577.5円、オルカン高配当が1,650円。差額は年1,072.5円です。20年持ち続ければ、単純に足し算するだけで21,450円の差になります(実際は残高が増えるほど差も広がります)。
差が付く理由のひとつはシリーズの違いです。オルカンが属するのは「eMAXIS Slim」です。「業界最低水準の運用コストを将来にわたって目指し続けるファンド」を掲げたシリーズで、2023年9月の引き下げのように何度も料率を下げてきました。ただし運用会社は「業界最低水準の運用コストを目指しますが、その達成を保証等するものではありません」とも注記しています。今回の新ファンドの名前は『eMAXIS 高配当全世界株式』で、「Slim」が付いていません。同じeMAXISブランドでも、コスト最安を追いかける方針を掲げたシリーズの商品ではない、ということです。
この差をどう見るかは、期待するものによって変わります。オルカンは指数の2,460銘柄をまるごと追いかける手数料の安さで勝負しており、新ファンドは713銘柄への絞り込みと年4回の払い出しという手間の対価としてコストを取っています。「同じものが高くなった」のではなく「別のものに別の値段が付いた」という理解が正確です。
※信託報酬0.1650%の内訳は、税抜年率で委託会社0.080%・販売会社0.050%・受託会社0.020%(純資産総額5,000億円未満の部分)と開示されています。このほか監査費用や売買委託手数料などが別途かかります。
過去のリターン:10年で見るか1年で見るかで、答えがひっくり返る
ここがいちばん誤解されやすいところです。MSCIのファクトシート(2026年7月31日時点、米ドルベース、配当込みのグロス表示)の年率リターンを並べます。
| 期間 | 高配当利回り指数 | MSCI ACWI | 勝っているのは |
|---|---|---|---|
| 年初来(1月からの累計) | 15.88% | 11.60% | 高配当 |
| 1年 | 27.13% | 22.59% | 高配当 |
| 3年(年率) | 15.66% | 18.82% | オルカンの指数 |
| 5年(年率) | 10.14% | 11.35% | オルカンの指数 |
| 10年(年率) | 10.12% | 12.86% | オルカンの指数 |
| 1994年6月30日以降(年率)※高配当側は算出開始前を含むバックテスト | 9.97% | 8.77% | 高配当 |
直近1年と年初来は高配当が上回り、3年・5年・10年ではオルカンの指数が上回り、32年で見ると(算出開始前を含むバックテスト値で)また高配当が上回ります。「どちらが優れているか」という問いには、期間を決めずには答えられません。あなたがオルカンやS&P500を積み立てているのは何年後のためでしょうか。その年数に近い行を見るのが、いちばん自分に関係のある比較になります。
いちばん実感しやすいのが10年です。年率10.12%と12.86%の差は、数字だけ見ると2.74ポイントですが、100万円を10年間置いた結果は262万円と335万円になります。差は73万円です。年率2.74ポイントの差は、10年でこれだけの金額になります。
※上記はいずれも米ドルベース・グロス(配当を課税前で再投資したと仮定)の指数の数値です。日本の投資家が円で受け取る成果は、為替の影響と信託報酬の分だけこれとは変わります。また新ファンドが連動をめざすのは「円換算ベース」の指数であり、この表の米ドル数値がそのまま基準価額の動きになるわけではありません。
「高配当は下落に強い」は、半分正しくて半分違う
高配当型を検討する人がいちばん期待するのが「下がりにくさ」です。ここは丁寧に見る価値があります。
普段の値動きの小ささという意味では、期待どおりです。過去10年の年率標準偏差は、高配当利回り指数が12.71%、MSCI ACWIが14.70%でした。市場全体が動いたときの連動しやすさを示すベータは0.87です(こちらは10年ではなく1994年6月以降を通じた数値)。1.00の市場平均より小さく動く傾向が、数字に出ています。
年ごとに見ても、下げ相場では守っています。2022年のリターンは高配当利回り指数が-6.73%、MSCI ACWIが-17.96%。100万円なら93.3万円と82.0万円で、11万円以上の差が付きました。
その代わり、上げ相場では置いていかれます。2020年は高配当が2.67%、MSCI ACWIが16.82%。100万円が102.7万円と116.8万円という結果でした。2024年も8.30%対18.02%、2023年も10.33%対22.81%と、大きく差が付いた年があります。
そして見落とされやすいのがここです。最大ドローダウンは、高配当利回り指数が61.49%、MSCI ACWIが58.06%。どちらも2007年10月31日から2009年3月9日にかけての金融危機局面ですが、下落幅は高配当のほうが大きいのです。100万円なら38.5万円と41.9万円まで減った計算になります。
※高配当利回り指数の算出が始まったのは2012年1月16日です。したがって2007年から2009年のこの数字は、実際に指数が動いていた記録ではなく、同じ計算ルールを過去に当てはめて後から算出したバックテスト値です。MSCI自身も「バックテストの成績と実際の結果には、しばしば重要な違いがある」と注記しています。一方の比較相手であるMSCI ACWIは1990年5月に算出が始まっているため、58.06%のほうは実測値です。性質の違う2つの数字を並べている点をふまえて読んでください。なお、なぜ高配当側の下落が深く出たのかは、当時のセクター構成が公表資料で確認できないため本記事では断定しません。
普段は揺れが小さく、本当の危機では市場平均より深く沈むことがある。「高配当だから安心」と一言でまとめると、この2つ目が抜け落ちます。
あなたのオルカンにこれを混ぜると、ポートフォリオはどう変わる?
ここからが本題です。オルカンを積み立てているタケシさんが、この新ファンドを買った場合に何が起きるのか。3つのケースで見ていきます。
ケースA:オルカン100万円のうち20万円分を移した場合
積立をまるごと切り替えるのは影響が大きいので、まず一部だけ移す場合を見ます。オルカン80万円+オルカン高配当20万円という組み合わせにすると、指数ベースの配分はこう変わります(いずれもMSCIファクトシートの2026年7月末時点の比率で計算)。
- 情報技術:30.28% → 25.32%(30.3万円分 → 25.3万円分)
- ヘルスケア:8.39% → 10.45%(8.4万円分 → 10.5万円分)
- 米国比率:63.55% → 61.23%
例えば「AI関連への集中を減らしたい」という動機で20万円分を移したとしても、情報技術は5ポイントほどしか下がりません。2割動かしてこの程度、というのが実感に近いはずです。狙った効果を得たいなら、もっと大きく動かす必要があります。逆に言えば、少額のお試しならポートフォリオ全体への影響は限定的です。
ケースB:積立をまるごと切り替えた場合
毎月の積立先を全部オルカン高配当に変えると、新しく買う分の中身は情報技術5.47%・ヘルスケア18.69%・米国51.93%(いずれもMSCIファクトシートの2026年7月末時点)に変わります。すでに持っているオルカンはそのまま残るので、資産全体では時間をかけて2つの指数が混ざっていく形になります。
為替の影響はどちらも同じ構造です。プレスリリースには「原則として、為替ヘッジは行いません」「為替ヘッジを行わないため、為替相場の変動による影響を受けます」と書かれています。円安なら円換算の評価額が押し上げられ、円高なら目減りする点は、いま持っているオルカンと変わりません。円安対策として乗り換える理由にはならない、ということです。
ケースC:配当払出型で分配金を受け取った場合
ここがNISAでいちばん間違えやすい部分です。金融庁は新しいNISAについて「商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能」と説明しています。
分配金の受け取りは、売却ではありません。つまり分配金を受け取っても非課税投資枠は戻ってきません。なお受取方法の設定を誤ると、NISA口座なのに配当へ課税されてしまう商品もあります(配当受取方式の落とし穴の記事で解説しています。今回のような投資信託の分配金は対象外です)。受け取った分配金を同じファンドに再投資したければ、その年の投資枠を新たに使うことになります。成長投資枠の年間上限は240万円、つみたて投資枠は120万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円が上限)です。
例えば毎月5万円をこのファンドに積み立てると年60万円で、成長投資枠240万円の25%を使う計算になります。そこに分配金の再投資分を足すと、枠の消費はさらに進みます。「配当をもらいながら枠も減らさない」という都合のいい形にはなりません。
分配金そのものがNISA口座で非課税になるのは、事実です。ただし非課税になることと、複利(増えた分にもさらに値上がりが乗っていくこと)で増えることは別の話です。資産を増やす目的なら資産成長型、生活費として定期的に現金がほしいなら配当払出型、という選び方が素直だと思います。
私が高配当で6万円損切りしたとき、見ていなかったもの
利回り5.8%の高配当銘柄を、権利落ち直後(配当を受け取る権利が確定し、その分だけ株価が下がったタイミング)に45万円分買ったことがあります。半年後、株価は18%下がり、受け取った配当を差し引いても約6万円のマイナスで損切り(含み損を確定させて売ること)しました。買う前に見ていたのは利回りの数字だけでした。その会社が何で稼いでいるのか、業種が偏っていないかは、まったく見ていませんでした。
今回のような指数型の商品は、713銘柄に分散されているのでこの失敗とは事情が違います。個別の高配当株を選ぶときにどこを見るかは9つの指標で評価する記事にまとめました。ただ、判断の順番は同じです。3.27%という利回りを先に見て、その後で中身を見る順番だと、情報技術が5.47%まで下がることや、金融危機の局面を後から計算すると61.49%沈む結果になることは目に入りません。
もうひとつ、私がNISAで勘違いしていたことがあります。非課税枠の復活を「売った金額(時価)の分が翌年戻る」と理解しており、過去にその趣旨で書いてしまったことがありました。実際に戻るのは取得価額(簿価)の分で、時期は翌年以降です。制度は「得か損か」で読むと間違えます。「何が基準になっているか」を先に確認したほうが確実です。
タケシさんが判断する前に確認したい5つの数字
- 713 と 2,460:連動する指数の銘柄数が3割弱に絞られます。分散を狭めることを受け入れられるか
- 0.1650% と 0.05775%:100万円あたり年1,072.5円の差が、持っている限り毎年続きます
- 3.27% と 1.59%:配当利回りの差。ただし信託報酬と現地の税を引く前の数字です
- 10.12% と 12.86%:過去10年の年率。100万円を10年置くと262万円と335万円の差になります
- 61.49%:高配当利回り指数の最大の下落率(2012年の算出開始前を含むバックテスト値)。100万円が38.5万円になる計算です
この5つを見たうえで「それでも定期的な現金がほしい」と思えるなら、配当払出型を選ぶ理由になります。「増やしたいだけ」なら、いま積み立てているオルカンを続けるほうが手数料の面では有利です。どちらが正解かではなく、何のために持つかを先に決める順番が効きます。
いまの配分を数字で確認してから決める
新しい商品を足すかどうかは、いまのポートフォリオが何にどれだけ偏っているかを知らないと判断できません。私が開発・運営するポートフォリオ分析サービスPFWise(portfolio-wise.com)では、保有資産をインポートすると、セクターや地域の偏り、下落時の想定損失額をスコアで確認できます。情報技術に何%寄っているかを先に把握しておくと、「高配当を混ぜる意味があるか」の判断が具体的になります。
まとめ
オルカン高配当は、オルカンの高配当版ではなく、713銘柄に絞った別の指数に連動する別の商品です。配当利回りは3.27%と2倍以上になります。その代わり信託報酬は約2.9倍、過去10年の年率は2.74ポイント低い水準でした。金融危機の局面を後から計算すると、下落率は61.49%と市場平均より深いという試算にもなります(この期間は指数の算出開始前でバックテスト値)。
直近1年は高配当が市場平均を上回っており、この先も同じ順位が続く可能性はあります。ただ、順位は期間の取り方で入れ替わります。「いま勝っているほう」ではなく「自分が何のために持つのか」で選ぶほうが、10年後に納得できる判断になるはずです。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資手法を推奨するものではありません。記載した数値は以下の一次資料に基づきます。三菱UFJアセットマネジメント株式会社のプレスリリース(2026年8月26日)、同社 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート(2026年4月30日基準)、MSCI Inc. の指数ファクトシート(MSCI ACWI / MSCI ACWI High Dividend Yield Index・いずれも2026年7月31日時点・米ドルベース)、金融庁のNISA特設ウェブサイト、販売会社の公表情報。MSCI の指数数値は米ドル建て・グロス(配当を課税前で再投資したと仮定)であり、円換算した実際の投資成果とは異なります。当該ファンドの有価証券届出書は2026年8月26日に提出されたもので、届出の効力発生までに記載内容が訂正される場合があります。購入にあたっては必ず最新の交付目論見書をご確認ください。過去の実績・バックテストは将来のリターンを保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。書籍・Audibleリンクは各社アフィリエイトプログラムによるリンクです。書籍リンクはAmazonアソシエイトのアフィリエイトリンクです。