オルカンがS&P500を純資産で逆転。新NISA3年目、"どっちか論争"を終わらせる3つの数字【2026年6月・初心者向け】
2026年2月、オルカンの純資産がS&P500を初めて逆転し、6月時点で約12.3兆円。乗り換えの合図と読むのは危険です。信託報酬・米国比率・取り崩し年数の3つの数字で、どっちか論争を終わらせる考え方を初心者向けに解説します。
2026年2月に初逆転、6月時点でオルカンが約12.3兆円に
2026年2月27日、eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の純資産残高が、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を初めて上回りました(松井証券などの報道による)。ETFを除く国内の公募株式投信で最大の座を占めた歴史的な瞬間で、2月9日に純資産10兆円を突破してからわずか2週間余りでの逆転でした。その後も差は定着・拡大し、2026年6月12日時点ではオルカン約12.3兆円。S&P500も12兆円規模ですが、オルカンがこれを上回る状態が逆転後も続いています。新NISAがスタートして3年目、日本の個人投資家が「全世界分散」を選ぶ流れが、金額として「全米集中」を上回る状態が続いています。
ニュースを見た瞬間、「乗り換えたほうがいいのかな」と思った方も多いでしょう。私も2025年に同じ問いを半年以上かけて考え続けました。そして大きな失敗をしました。その話から始めます。
新NISA初年度、私は「迷いのコスト」を払った
新NISA初年度、私は成長投資枠をほぼS&P500に集中させました。「米国が最強」という空気は確かにあり、当時の積立額の大半をeMAXIS Slim 米国株式に向けていました。
2025年に入ると、メディアで「オルカン優位論」が増え始めました。含み益が出ていたS&P500を一部売ってオルカンに乗り換えるべきかどうか、ずっと迷い続けました。半年以上です。結局、2025年半ばに30万円分だけ売却してオルカンに移しました。
NISAの売却枠は翌年まで復活しません。その間、再投資の機会を1年分まるごと逃しました。さらに売却直後にS&P500が一段上昇し、持ち続けていれば得られた差益も取り逃しました。この「迷いのコスト」は、試算でざっと4〜5万円と1年分の非課税枠です。
振り返ると、失敗の本質は「どっちが上がるか」を当てにいったことでした。先に「自分は何の数字で選ぶか」を決めていれば、ニュースのたびに売買して摩擦コストを払うことはなかったはずです。
なぜ資金はS&P500からオルカンに移ったのか
純資産の逆転は、単純に「オルカンのほうが成績がよかった」からではありません。新規の資金流入がオルカンに集中した結果です。その背景を考えるには、少し歴史を見る必要があります。
平成バブル期、日本株は世界の株式時価総額の約4割を占めたとされます(諸説あり)。米国を抜いて世界一となり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれ、日本株への集中は「合理的な選択」に見えました。その後の30年は周知のとおりです。
2000年前後のITバブル崩壊時、今度は米国の世界シェアが一時的に45%前後まで低下しました。その後も新興国の台頭によって揺れ続け、今のオルカンにおける米国比率約60%(62〜66%)も、「こうした増減の現時点のスナップショット」にすぎません。
純資産がオルカンへ動いたのは「オルカンが正解になった」のではなく、「特定の国に集中することへの警戒が広がった」シグナルです。1989年の日本を知る世代や、その話を聞いた若い投資家が、次の「一国集中バブル」を避けようとしている。その意思決定が積み重なって、数字が逆転しました。
「どっちが上がるか」は間違った問いだった
私が半年間迷い続けたのは、問いの立て方が間違っていたからです。「今後10年、S&P500とオルカンのどちらが上がるか」は、誰にも答えられない問いです。もし答えられる人がいれば、その人の予測は市場に即座に織り込まれ、優位性は消えます。
正しい問いは「自分はどの数字で選ぶか」です。選択基準を先に決めておけば、ニュースで逆転が報じられるたびにポジションを動かす必要はなくなります。
では、見るべき数字はどれか。実際に比べてみると、判断材料は3つに絞られます。
見るべき3つの数字、捨てた2つの指標
オルカンかS&P500かを選ぶとき、私が最終的に「判断の根拠にする」と決めた数字は3つだけです。逆に言えば、その他の指標は「見ても判断を変えない」ものとして捨てました。
- コスト差(信託報酬):オルカンは年0.05775%、S&P500は年0.08140%。100万円あたりに換算すると、オルカンが年577円、S&P500が年814円。差はわずか約237円です。20年保有しても数千円にしかなりません。「コスト差がどちらかの圧倒的な理由になる」という主張をよく見かけますが、この金額では誤差の範囲です。ここで迷うのは時間の無駄と判断しました。
- 米国比率(地域集中度):S&P500は米国企業503銘柄で構成され、実質的に米国時価総額の約80%をカバーします。オルカンは米国が約60%、残り40%が日本(約4.7%)、欧州、インド(約1.9%)などに分散されます。これは「自分が一国の経済にどれだけ賭けられるか」という価値観の選択です。数値の正誤ではなく、許容できる集中度の問題です。
- 取り崩しを始めるまでの年数:20年以上先であれば、複数の国・地域を保有する分散(オルカン)の効果が時間をかけて発揮されます。10年以内に使い始める場合は、当面の強さに寄せる判断もありえます。期間が配分を決める、というのが私の結論です。NISAの枠をどちらの商品に振り分けるかについては、つみたて枠と成長枠の使い分けも参考にしてください。
そして、私が「判断の根拠にしない」と決めた指標が2つあります。
- 過去5年・10年のリターン:「米国株はここ10年で世界最強だった」は事実ですが、それはすでに現在の株価に織り込まれています。過去の勝者を後追いで買うことは、将来のリターンを約束しません。2025年にS&P500を「成績がよかったから」という理由で選んでいた私が、実は高値づかみの典型的なパターンを踏んでいたとも言えます。
- 純資産ランキング・人気:今回の逆転ニュース自体が、この指標です。純資産が大きくなった理由は「多くの人が買った」ことであり、「正しさが証明された」ことではありません。1989年の日本株シェア45%も、当時の人気の頂点でした。人気は集中の裏返しです。
私はこの3つで考え直し、決めた
3つの数字を並べて、自分に当てはめました。取り崩しを始めるまでの期間は約20年。コスト差は年237円(誤差)。米国100%への20年先の集中リスクは、私には過大に感じる。
この3点を整理した時点で、「オルカン中心にする」という判断は自然に出ました。S&P500への未練と、「乗り換えたほうがいいかも」という揺らぎが、そこで初めて消えました。
逆に言えば、私が半年間迷い続けたのは、この3点を最初から決めていなかったからです。「どっちが上がるか」を検索し続けていた時間と、結局払ったコスト(4〜5万円と1年分の非課税枠)を考えると、判断基準を先に決めることの価値は数字で明確です。
取り崩しまでの期間が10年以内の方、あるいは「米国経済への集中でも構わない」という確信がある方は、S&P500を選ぶ理由は十分あります。どちらが正解かではなく、どちらが自分の3つの数字に合っているかです。両商品の詳細な比較についてはオルカンとS&P500の選び方を詳しく比較もあわせてご覧ください。
今日できる3ステップ
- ①今の積立先が全世界株(オルカン)か全米株(S&P500)かを、証券口座の保有商品一覧で確認する
- ②自分が取り崩しを始めるまでの年数を数える(20年以上か、10年以内か)
- ③その年数を基準に、迷ったら「3つの数字(信託報酬・米国比率・取り崩し年数)」のどれを優先するか1つ決めておく
まとめ:逆転は乗り換えの合図ではない。自分の3数字で決める。
オルカンがS&P500を純資産で逆転したのは、「どちらが優れているかが確定した」ニュースではありません。オルカン約12.3兆円がS&P500を上回る状態が続いているという数字は、多くの人の「集中を避けたい」という判断の積み重ねです。
1989年、世界株の45%を占めた日本株が「次の30年」で何をしたかを思えば、今の米国株60%という比率が永続する保証がないことは明らかです。どこかの時点でシェアは動きます。それがいつかを予測するのではなく、「時価総額に比例した全世界分散を持ち続ける」というのがインデックス投資の根本です。
判断の軸は3つ。信託報酬の差(年237円)は誤差。米国比率100%か60%かは許容できる集中度の問題。取り崩しまでの年数が配分を決める。この3点を自分に当てはめれば、逆転ニュースが出るたびにポジションを動かす理由はなくなります。
自分のポートフォリオが現在どの地域に何%配分されているか、取り崩しを始めるまでの年数と照らし合わせて一覧で確認することが、次の半年を迷わず過ごすための最初の一歩になります。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
サイコロジー・オブ・マネー
モーガン・ハウセル
お金の判断ミスはほとんどが心理の問題。「どっちか論争」で半年迷った私が読み返した一冊。握力を保つための思考フレームが詰まっています。
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参考・出典
- オルカンの純資産が「Slim S&P500」を抜いた(松井証券マネーサテライト)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)公式(信託報酬・純資産)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)公式
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を保証しません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。