「NISA貧乏」を避ける積立額の決め方——クレカ積立は還元率より年会費に要注意【2026年8月】
投資初心者向け。SNSで話題の「NISA貧乏」を避ける、無理のない積立額の決め方3ステップを解説。クレカ積立は還元率0.5%〜3.0%の幅がありますが、年会費33,000円を差し引くと実質の得は逆転することも。
投資初心者でも分かるように解説します。最近、SNSで「NISA貧乏」という言葉をよく見かけるようになりました。新NISAの非課税枠(年間360万円・生涯1,800万円)を早く埋めなければ損だという焦りから、収入に見合わない金額を積立に回してしまうことがあります。その結果、日々の生活費が足りなくなる状態を指す俗称です。
正式な制度用語ではありませんが、 SBI証券 や 大和証券 といった証券会社自身が「NISA貧乏を避ける」というコラムを出すほど、実際に起きている悩みとして扱われています。あなたのオルカン・S&P500への積立額は、本当に「無理なく続けられる」水準になっているでしょうか。
「NISA貧乏」とは何か
NISA貧乏に陥る最大の原因は、「今年の非課税枠を使い切らないと損」という焦りです。生活費を削って積立額を増やしたり、相場が下がると不安になって積立を止めたり売却したりすることがあります。非課税メリットを優先するあまり、無理な投資を続けてしまうケースが典型です。詳しくは 非課税枠の使い切り方の記事 でも解説していますが、年間の投資枠は毎年リセットされ翌年に繰り越せません。それでも焦る必要はなく、生涯の非課税保有限度額1,800万円には利用期限がないため、何年かけて埋めても問題ありません。
「今年60万円の非課税枠が余っている」という表示を見ると、つい使い切りたくなる気持ちは自然です。ただし、慌てて生活費を削ってまで埋める必要はありません。焦って無理な金額を設定するより、どんな相場でも止めずに続けられるペースを優先したほうが、結果的に長く続けやすくなります。
相場が下がったらどうなる? — 積立額の妥当性は「下落時」に試される
あなたのオルカンやS&P500への積立額が無理なく続けられるかどうかは、相場が順調なときには分かりません。本当に試されるのは、相場が下落したときです。
例えば、年間60万円(月5万円)を積立てているとします(すでに積立てた分が全額投資に回っていると仮定した場合の単純計算です)。相場が20%下落すると評価額(今売ったらいくらになるかの金額)は約48万円、30%下落すると約42万円まで目減りする計算になります。この数字を見たときに「積立を続けられる」と思えるかどうかが、積立額が適正かどうかの実質的なテストです。もし「積立額が大きすぎて怖くなり、止めたくなる」と感じるなら、その金額は今のあなたにとって無理をしている可能性があります。
積立を止めたり取り崩したりすると、下落した安い価格で買えるはずだった口数(投資信託を購入した単位のこと)を逃してしまいます。その後の回復局面での増加分も受け取れなくなります。無理な金額を設定して下落時に継続できなくなるくらいなら、最初から少し控えめな金額で、どんな相場でも止めずに続けられる設定にしたほうが、長期的なリターンは大きくなりやすいと言えます。例えば、コロナショック(2020年)の急落局面でも積立を止めなかった人は、その後の回復局面でより多くの口数を安く仕込めていました。詳しくは ドルコスト平均法の記事 でも解説しています。
無理のない積立額を決める3ステップ
証券会社のコラムでも共通して勧められているのは、パーセンテージのような一律の正解ではなく、以下の手順で「自分にとって続けられる額」を確認する方法です。
- 生活防衛資金(生活費の3か月〜1年分)を現金で確保する。 まだ確保できていない場合は、積立額を増やすより先にこちらを優先します。
- 今の積立額が20〜30%下落しても続けられるか計算してみる。 月5万円なら年間60万円、30%下落で約42万円。この目減りを見て「続けられる」と思えるか、自分に問いかけます。
- 「今年の枠を使い切る」でなく「無理なく何年続けられるか」で金額を決める。 年間投資枠(つみたて投資枠は年120万円まで)の未使用分は翌年に繰り越せず、毎年リセットされます。ただし生涯の非課税保有限度額1,800万円には利用期限がないため、今年埋め切れなくても、何年かけて積み立てても問題ありません。
見落としがちな「クレカ積立」の設定 — 還元率0.5%〜3.0%、年会費を差し引いて比べる
積立額そのものを無理に増やさなくても、「同じ金額をどう積み立てるか」の設定を見直すだけでお得になる方法があります。クレジットカード決済でのつみたて投資(クレカ積立)です。
新NISAのつみたて投資枠は、クレカ決済の上限が月10万円です(つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた上限)。問題は、証券会社・カードの組み合わせによって還元率が大きく異なる点です。
楽天証券・SBI証券とも、年会費無料の基本カード(楽天カード一般・三井住友カード(NL)など)であれば、還元率はどちらも0.5%です。楽天証券はオルカンのように運用コストの低いファンドの場合にこの率が適用されます(2026年8月時点・ 楽天証券公式サイト の案内による)。SBI証券の三井住友カード(NL)は年間カード利用10万円以上が条件です(2026年8月時点・ SBI証券公式FAQ による)。この時点では2社に差はありません。
差が生まれるのは、年会費のかかる上位カードを使った場合です。SBI証券は三井住友カード プラチナプリファードを使うと還元率が上がります。ただし条件があります。前年のカード利用額(積立分を除く)が500万円以上であれば3.0%ですが、300万円以上500万円未満なら2.0%、300万円未満なら1.0%にとどまります(2026年8月時点・SBI証券公式FAQによる)。誰でも無条件に3.0%になるわけではありません。
ここで見落としやすいのが、年会費を差し引いた「実質還元率」(年会費を引いた後、実際にどれだけ得しているかの割合)です。月10万円(年120万円)を積み立てた場合で比べてみます。
| カード | 年会費 | 還元率 | 年間ポイント | 年会費差引後 |
|---|---|---|---|---|
| 年会費無料カード(楽天カード一般・三井住友カード(NL)など) | 0円 | 0.5% | 6,000円相当 | 6,000円 |
| 三井住友カード ゴールド(NL)(年間利用100万円以上・年会費は同条件で永年無料) | 0円 | 1.0% | 12,000円相当 | 12,000円 |
| プラチナプリファード(年間利用300万円未満) | 33,000円 | 1.0% | 12,000円相当 | −21,000円 |
| プラチナプリファード(年間利用300万円以上500万円未満) | 33,000円 | 2.0% | 24,000円相当 | −9,000円 |
| プラチナプリファード(年間利用500万円以上) | 33,000円 | 3.0% | 36,000円相当 | 3,000円 |
年会費のかかるプラチナプリファードは、最高条件の年間利用500万円以上・還元率3.0%が適用されても、年会費33,000円を差し引くと手元に残るのは3,000円です。年会費無料カードの0.5%(6,000円)の半分にしかなりません。300万円未満なら21,000円のマイナスです。つまり積立のポイントだけで比較する限り、プラチナプリファードが年会費無料カードを上回る場面はないということです。
条件を満たして最上位カードに切り替えても、積立のポイントだけを見れば年会費無料のカードより得になることはありません。「還元率が高いから」という理由だけで年会費のかかるカードに飛びつくのは、「NISA貧乏」と同じ「焦って無理をする」パターンだと言えます。年会費無料のカードで0.5%を受け取り続けるか、条件を満たせば年会費無料のまま還元率が上がる三井住友カード ゴールド(NL)を選ぶほうが、積立の得だけで見れば安全です。
※上記の比較は積立で得られるポイントのみを対象とした試算です。カード付帯の保険・優待店舗での還元・空港ラウンジなどの便益は含みません。年会費無料化の条件(ゴールド(NL)は年間利用100万円以上)を満たさない場合は、その年だけ年会費がかかる点にもご注意ください。
最新情報: 20代のNISA買付額は2014年比17倍に(2026年8月24日追記)
本記事公開後の続報として、金融庁のまとめを共同通信が報じたデータを追記します。20代のNISAを使った年間買付額は2025年に1兆2,648億円となり、制度が始まった2014年比で約17倍に増加しました。若い世代ほど物価高や年金制度への不安を感じやすく、投資で将来に備える動きが強まっているとみられています。一方で同じ報道は、投資にお金をつぎ込み過ぎて生活が苦しくなる「NISA貧乏」が国会でも取り上げられている点にも触れており、本記事のテーマである「無理なく続けられる金額を優先する」考え方の重要性を裏付ける内容になっています。
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「自分の積立額が今の生活に対して無理をしていないか」は、家計簿とポートフォリオを別々に見ているとなかなか気づけません。筆者が開発・運営するポートフォリオ分析サービスPFWise(portfolio-wise.com)では、保有資産をインポートすると、オルカンやS&P500の比率・下落時の想定損失額などをスコアで確認できます。積立額を見直す前に、まず現状を数字で把握することから始めてみてください。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
「無理なく続けられる金額」を決める判断軸は、家計管理と投資の両方の基礎知識があると精度が上がります。以下の本はその土台になります。
最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい
中野晴啓
NISA制度の基本と、無理なく続けるための考え方を初心者向けに解説。積立額をどう決めるかで迷ったときの判断軸になる。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資手法を推奨するものではありません。クレジットカードの還元率・年会費は変更される場合があるため、最新の情報は各証券会社・カード会社の公式サイトでご確認ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。過去の実績は将来のリターンを保証するものではありません。書籍・Audibleリンクは各社アフィリエイトプログラムによるリンクです。