日経平均が反発する裏で、円安40年ぶり水準・信用取引残高も過去最高——過熱相場でもNISA積立を続けるべき理由【2026年7月】
日経平均は半導体株買いで反発し66,500近辺で推移。同じ時期に信用買い残高は7兆円の大台を突破、ドル円は163.24円と40年ぶりの円安水準に。個別株の信用取引と、オルカン・S&P500積立のどちらが合理的かを数字で比較します。
日経平均は反発、でも本当に見るべきはそこじゃない
投資初心者でも分かるように解説します。
(はじめにお断りしておくと、私はポートフォリオ管理ツールPFWiseの運営者です。記事の後半で自分のサービスにも触れます。)
2026年7月23日、日経平均株価は前営業日比+305ポイント高い66,421で寄り付き、午後にかけて上げ幅を拡大、 一時は+380ポイント程度まで上昇して66,500近辺で推移しました。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が 3営業日続伸したことを受け、東京エレクトロン・レーザーテック・アドバンテストといった半導体関連株への 買いが先行したほか、韓国のKOSPI(総合株価指数)も底堅く推移し、投資家心理を支える材料になったとされています。
正直に言うと、半導体株についてはこの記事の主役にはしません。ここ最近の記事でもKimi K3ショックやキオクシアの 急落など、半導体関連の急な値動きは繰り返し取り上げてきました。今回の日経平均反発でも一因ではありますが、 同じテーマを何度も掘り下げるより、今日はもっと見過ごされがちな2つのデータに焦点を当てたいと思います。 「信用取引残高が過去最高になっていること」と、「円安が40年ぶりの水準まで進んでいること」です。
信用取引残高が7兆円の大台を突破——なぜ「警告サイン」とされるのか
東京証券取引所と名古屋証券取引所の信用買い残高が、2026年7月上旬に合算で7兆円の大台を初めて突破したと 報じられています(約7.02兆円)。信用買い残高というのは、投資家が証券会社からお金を借りて買った株式のうち、 まだ売って決済していない分の残高です。この数字が積み上がるほど、市場全体に「いつか売られるはずの潜在的な 買いポジション」が積み上がっていることを意味します。
市場関係者からは「過去の信用残高ピークは往々にして調整の前兆となってきた」「今の上昇相場がどこまで正当な 企業評価に基づくものか、それともレバレッジを効かせた順張りマネーが積み上がっているだけなのか、構造的な 疑問を呈している」といった警戒の声が上がっています。実際、直近では日経平均が単日で+5.58%と急伸した一方、 TOPIX(東証株価指数)は+3%程度の上昇にとどまった日があったとも報じられており、値動きの主導が一部の 値がさ株に偏っていて、相場全体の厚みには疑問符が付くとの指摘もあります。
信用取引で相場が崩れるとどうなる?——追証・強制決済のメカニズム
なぜ信用残高の積み上がりが警戒されるのか。ここで信用取引特有の「追証(おいしょう)」と「強制決済」の 仕組みを押さえておきましょう。信用取引で保有する株式の評価額が値下がりし、証券会社に預けた担保 (委託保証金)の維持率が一定水準を下回ると、証券会社は投資家に対して追加の担保(追加保証金、略して追証)を 期限内に入金するよう求めます。期限までに入金できなければ、証券会社は保有ポジションを強制的に決済 (強制ロスカット)します。
ポイントは、追証による強制決済は「投資家の意思」とは無関係に発動するということです。信用取引を使って いない現物投資家であれば、株価が下がっても「待つ」という選択肢が残ります。しかし信用取引の場合、 待ちたくても証券会社側の基準で機械的に売られてしまう。これが積み上がると、下落局面で強制的な売りが 連鎖し、下げをさらに加速させる「売りが売りを呼ぶ」展開につながりやすいとされています。信用残高が 過去最高ということは、この強制決済の連鎖が起きたときの潜在的な規模も、過去最高になっているということです。
具体的な数字で見てみます。仮に自己資金100万円に加えて証券会社から200万円を借り入れ、合計300万円分の 個別株を信用取引で保有していたとします(自己資金の3倍相当のポジション)。ここで株価が20%下落すると、 保有資産の評価額は300万円→240万円に減りますが、借入金200万円はそのままです。差し引きすると、 自己資金部分は100万円→40万円、実に60%の目減りという計算になります。 同じ20%の下落でも、レバレッジをかけずにオルカン・S&P500を現金で積み立てていた場合は、 資産は100万円→80万円の20%減にとどまります。この差が、信用取引の「レバレッジ(てこの原理)」の 正体です。
円安が163.24円——1986年以来、40年ぶりの水準
もう1つのデータが為替です。ドル円は2026年7月21日に163.24円まで上昇し、1986年以来およそ40年ぶりの 円安水準を更新したと報じられています。日本の財務省は4月28日〜5月27日の期間に合計11兆7,345億円規模の 為替介入を実施したと伝えられていますが、その効果は長続きせず、その後ドル円は介入前の水準を上回って 再び円安方向に進みました。
この円安の構造的な背景にあるのが、日米の政策金利差です。2026年7月時点で、米国(FRB)の政策金利は 3.50〜3.75%程度、日本(日銀)は1.0%程度とされ、その差はおよそ250〜275bp(ベーシスポイント、 1bp=0.01%)に達します。金利の高い通貨(米ドル)で運用したほうが得られる金利収入が大きいため、 円を売ってドルを買う動きが生じやすく、これが構造的な円安圧力になっているとされています。
あわせて、日銀も7月30〜31日に金融政策決定会合を開き、四半期に一度の展望レポートを公表する予定です。 FOMC(7月28〜29日)と日銀会合(7月30〜31日)がわずか数日差で連続する今回は、日米の金融政策スタンスの 違いが改めて意識されやすいタイミングだと言えます。
あなたのオルカン/S&P500への影響は?
ここまで3つのデータ——日経平均の反発、信用取引残高の過去最高、円安40年ぶり水準——を見てきました。 オルカン・S&P500を新NISAで積み立てているあなたにとって、この3つはどう影響してくるでしょうか。 結論から言うと、この3つは「同じ方向」を向いていません。むしろ2つは正反対の意味を持ちます。
1つ目は警告です。信用取引残高が過去最高ということは、今の相場の一部が「個人投資家の過熱した順張り マネー」で支えられている可能性があるということです。日経平均が反発しているのを見て「今から個別株や 信用取引で一発当てたい」と思う人が増えるほど、この残高はさらに積み上がります。しかし前の章で見た 通り、信用取引には追証・強制決済という「意思に関係なく売らされる」仕組みがあります。相場が反落した ときの巻き戻しは、レバレッジをかけていない現物・積立投資家より、はるかに大きな傷を残します。
2つ目は追い風です。オルカン・S&P500はどちらも米ドル建て資産を含んでいるため、円安が進むと、 米国株の値動きとは別に「為替差益」が上乗せされます。たとえば1年ほど前、1ドル=150円だった時期に 100万円分のS&P500(米ドル建て資産)を購入していたとします。米国株価(ドル建て)がまったく変わらず 横ばいだったと仮定しても、今の163.24円で円換算し直すと、163.24÷150≒1.088倍、つまり為替差益だけで 約8.8%、100万円が108.8万円ほどに増える計算になります。円安は、オルカン・S&P500の 積立投資家にとっては黙っていても評価額を押し上げてくれる、数少ない「タダで乗れる追い風」です。
もちろん為替は反転もします。日銀が想定より早く追加利上げに動いたり、次の為替介入が効果を発揮したり すれば、円高方向に振れて、積み上がった為替差益の一部が剥落する可能性はあります。ただしその場合でも 減るのは「為替換算上の評価額」であり、S&P500やオルカンを構成する企業そのものの価値がなくなるわけ ではありません。信用取引の強制決済のように、意思に関係なく資産そのものを失う仕組みとは根本的に 性質が異なります。
整理すると、「日経平均が反発しているから、個別株や信用取引で相場に乗ろう」という発想は、 過去最高の信用残高というデータを踏まえると、むしろ最も混雑した(多くの人がすでに同じ方向に 賭けている)取引かもしれません。一方で「オルカン・S&P500の積立を淡々と続ける」という選択は、 信用取引特有の強制決済リスクを負わずに、円安という追い風だけをそのまま享受できます。 過熱した相場のニュースを見たときほど、この違いを思い出す価値があると思います。
今すぐできる3つのアクション
まとめ:過熱相場のニュースほど、積立の理由を思い出す
最後に整理します。
- 2026年7月23日、日経平均は前営業日比+305ポイント高で寄り付き、午後には+380ポイント程度まで上げ幅を拡大して66,500近辺で推移(半導体株買いが一因)
- 東証・名証の信用買い残高は2026年7月上旬に7兆円の大台を初めて突破(約7.02兆円)。過去の信用残高ピークはしばしば調整の前兆になってきたとの指摘がある
- ドル円は7月21日に163.24円まで上昇し、1986年以来およそ40年ぶりの円安水準を更新。財務省の11兆7,345億円規模の為替介入(4月28日〜5月27日)の効果もすでに帳消しになっている
- 日米の政策金利差(米3.50〜3.75%・日1.0%、250〜275bp)が円安の構造的な背景。FOMC(7月28〜29日)・日銀会合(7月30〜31日)の結果に注目
- 信用取引の順張りは追証・強制決済という「意思に関係なく売らされる」リスクを抱える一方、円安はオルカン・S&P500の積立投資家に為替差益という追い風をもたらす
日経平均の反発だけを切り取ると、つい「今から個別株や信用取引で乗りたい」という気持ちになりますが、 同じ日に「信用取引残高が過去最高」というデータが出ていることは、その気持ちにブレーキをかける材料に なります。逆に「円安40年ぶり」というデータは、オルカン・S&P500の積立投資家にとってはすでに追い風 として働いています。相場が過熱して見えるときほど、自分がどちらの立場にいるのかを数字で確認しておく 価値があると思います。
PFWiseのポートフォリオ診断では、保有資産の通貨別・セクター別の構成比を一枚で確認できます。 「自分の資産は円安・円高のどちらでどれだけ動くか」「信用取引のポジションを抱えていないか」を 数字で把握しておくと、こうした過熱相場のニュースが流れてきても、感情ではなく数字で判断しやすく なります。
関連書籍(もっと学びたい方へ)
サイコロジー・オブ・マネー
モーガン・ハウセル
信用取引残高が過去最高となり、値動きに気持ちが振られやすい今だからこそ読みたい1冊。お金の失敗の多くは知識でなく心理の問題だと分かれば、過熱相場でも積立の握力を保ちやすくなる。
通勤中に投資本を「聴く」という選択肢
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免責事項
※本記事で触れた日経平均・SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)・信用取引残高・TOPIX・ドル円相場・
為替介入・政策金利等の数値は、2026年7月時点の複数の市況報道(dshort/advisorperspectives.com、
EBC Financial Group、FXStreet、Vantage Markets等)にもとづく概説であり、その後の相場変動や
統計改定により変わる可能性があります。将来の値動きを保証・示唆するものではありません。
※記事内の「100万円が108.8万円」「自己資金100万円が40万円」といった試算は、報道された数値・
一般的な信用取引の仕組みをもとにした仮定の計算例であり、売買手数料・金利(信用取引の貸株料等)・
税金・スプレッド・実際の為替変動は考慮していません。実際の損益を保証するものではありません。
※信用取引・追証・強制決済に関する記述は、一般的な仕組みを解説する目的であり、特定の証券会社の
制度や個別の取引手法を推奨・否定するものではありません。委託保証金維持率の基準は証券会社ごとに
異なります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。
投資は自己責任でお願いします。
※本記事はPFWiseの運営者が執筆しており、個人的な見解を含みます。
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