「解放の日」から1年 — S&P500は結局どうなった?パニック売りした人としなかった人の差
2025年4月2日「解放の日」でS&P500 -20%→その後+32%回復。パニック売りした人vs持ち続けた人の100万円投資の差を計算。暴落時の行動原則を1年分のデータで検証。
2025年4月2日——「解放の日」に何が起きたか
2025年4月2日、トランプ大統領は「Liberation Day(解放の日)」と銘打ち、全世界を対象とした相互関税を発動しました。一律10%のベース関税に加え、中国には最大145%、EUには20%、日本には24%の追加関税が課されるという、戦後最大規模の貿易政策の転換です。
市場の反応は即座で、壊滅的でした。発動翌日からS&P500は急落を開始し、4月中旬までの約2週間で約20%の下落を記録。「コロナショック以来の暴落」「リーマン級」といった見出しがメディアを埋め尽くし、投資家の恐怖指数VIXは40を超えました。
NISAで積み立てを始めたばかりの人、初めて大きな含み損を経験した人——SNSには「もう無理、全部売った」「NISA解約した」という悲痛な投稿があふれました。
あれから1年——S&P500は結局どうなったか
結論から言えば、S&P500は底値から約32%回復しました。時系列で追ってみましょう。
2025年4月-6月: 暴落と底打ち
- 4月2日: 相互関税発動。S&P500は約5,670(発動前)
- 4月中旬: 底値到達。約4,550まで下落(-20%)
- 5月-6月: 90日間関税一時停止(中国以外)の発表で一部回復。ただし不透明感から5,000前後で横ばいで推移
2025年7月-12月: 段階的回復
- 7月: 米中の交渉再開報道で上昇基調に
- 9月: FRB(米国の中央銀行)の利下げ開始で資金がリスク資産に回帰
- 12月末: S&P500は約5,900まで回復(底値+32%)
2026年Q1: 再び下落
- 1月-3月: Q1は-4.6%の下落。原油高騰、イラン情勢、GDP減速で再び不安が広がる
- 2026年4月2日時点: S&P500は約5,630前後で推移
100万円投資で検証——パニック売りした人vs持ち続けた人
「解放の日」の前日、2025年4月1日にS&P500インデックスファンドに100万円を投資していた場合を計算してみましょう。
ケースA: パニック売りした人
4月中旬の底値付近(-20%)で耐えきれず売却。その後、恐怖が残り再投資のタイミングを逃す。
- 投資額: 100万円
- 売却時: 約80万円(-20%)
- 確定損失: -20万円
- その後、「もう少し下がったら買い直そう」と待つうちに株価は回復
- 2026年4月時点の手元: 約80万円(銀行預金のまま)
ケースB: 何もせず持ち続けた人
暴落中も売らず、NISAの積立設定もそのまま放置。
- 投資額: 100万円
- 底値時の含み損: 約80万円(-20%)——ここがメンタル的に最もキツい
- 2025年12月: 約104万円まで回復(+4%)
- 2026年Q1で-4.6%下落: 約99万円
- 2026年4月時点の評価額: 約99万円(ほぼ元本回復)
ケースC: 暴落中に追加投資した人
底値付近(4月中旬)で追加の10万円を投入した場合。
- 元の投資: 100万円 → 2026年4月時点で約99万円
- 追加投資10万円(底値付近)→ 底値からの回復+32%、Q1の-4.6%を経て約12.6万円に
- 合計: 約111.6万円(投資総額110万円に対して+1.5%)
3ケースの比較まとめ
投資総額110万円ベースで比較すると、以下のようになります。
- パニック売り: 80万円(-30万円)
- 何もしない: 99万円(-1万円)
- 暴落中に追加投資: 111.6万円(+1.6万円)
パニック売りした人と何もしなかった人の差は約19万円。暴落中に追加投資した人との差は約31.6万円。たった1年で、行動の違いだけでこれだけの差が開くのです。
なぜ「何もしない」が最強の戦略だったのか
理由1: 暴落は歴史的に必ず回復している
S&P500の過去50年間のデータを見ると、10%以上の調整は平均して年1.1回発生しています。そして、その調整から完全に回復するまでの平均期間は約4ヶ月です。20%以上の暴落(弱気相場入り)でも、回復までの平均期間は約14ヶ月。今回の「解放の日ショック」は、ほぼ教科書通りの回復パターンをたどりました。
理由2: 売るタイミングと買い戻すタイミング、両方当てるのは不可能
パニック売りの本当の問題は、売ること自体ではありません。「いつ買い戻すか」を正確に判断できないことです。底で売って天井で買い戻す——こんなことができる人は、プロのファンドマネージャーでもほぼいません。
実際、JPMorganのデータによると、S&P500の過去20年間でベスト10日を逃すだけで、リターンは年率10.0%→5.2%に半減します。そしてベスト10日のうち7日は、最悪の下落日から2週間以内に発生しています。つまり、暴落を避けようとして売ると、その直後の急回復も逃してしまうのです。
理由3: NISAの非課税メリットを捨てることになる
NISAで保有している場合、売却すると非課税枠を「消費」してしまいます。翌年まで同じ枠は復活しません。パニック売りは、含み損の確定だけでなく、非課税という最大のメリットを自ら放棄する行為でもあるのです。
でも今(2026年Q1)も不安なんですけど……
「1年前の教訓はわかった。でも今も状況は良くないのでは?」——その気持ちはよくわかります。2026年Q1の数字を正直に見てみましょう。
2026年Q1の不安材料
- S&P500 Q1リターン: -4.6%——2025年Q3以来の四半期マイナス
- GDP成長率: 0.7%——2022年Q1以来の低成長
- 雇用統計: -92,000人——コロナ以来初の純減(詳細記事)
- リセッション確率: 35-49%——Moody's 48.6%、Goldman 30%
- 原油高騰: イラン情勢でBrent $100超
しかし、1年前の教訓を思い出そう
1年前も「これは本当にヤバい」と全員が思いました。S&P500が-20%になった時、「まだ下がる」「リセッション確定」「NISAは罠だった」——SNSはそんな声であふれていました。結果はどうだったか。底値から32%回復です。
もちろん、「過去に回復したから今回も回復する」とは限りません。しかし、以下の事実は覚えておく価値があります。
- S&P500は過去50年間で、10年単位でマイナスになったことは一度もない(リーマンショックを含む2000-2009年でも、配当再投資ベースではプラス)
- NISAの積立投資は、下落局面で安く買えることが長期リターンの源泉
- リセッション確率が高いからといって、リセッションが必ず来るわけではない(2023年も確率65%だったが回避された)
「解放の日」から学ぶ、暴落時の3つの行動原則
1年間のデータが出揃った今、暴落時の行動原則を整理します。これは「解放の日」だけでなく、今後起きるあらゆる暴落に適用できるエバーグリーンな原則です。
原則1: 積立設定を絶対に止めない
NISAの積立設定は、暴落時こそ威力を発揮します。株価が20%下がっているということは、同じ金額で20%多くの口数を買えるということ。これがドルコスト平均法の本質です。設定を止めたり、積立額を減らしたりするのは、「安売りセールなのに店を出る」のと同じです。
原則2: SNSとニュースから距離を取る
暴落時のSNSは、恐怖を増幅するエコーチェンバーになります。「もっと下がる」「リーマン超え」「投資は終わり」——こうした声は、あなたの行動経済学的なバイアス(損失回避、群集心理)を刺激し、冷静な判断を奪います。暴落時にやるべきことは、SNSを閉じて、自分のポートフォリオの数字だけを見ることです。
原則3: 「数字」で自分のポートフォリオを評価する
含み損の「金額」を見ると感情的になりますが、ポートフォリオのセクター分散度、配当利回り、リスク指標を見れば冷静になれます。暴落時にパニックになるのは、「自分のポートフォリオが健全かどうか判断する基準がない」からです。PFWiseのPFスコアのような客観的指標があれば、「含み損は出ているが、分散は効いている。長期的には問題ない」と判断できます。
まとめ——「暴落は一時的、パニック売りの損失は永続的」
「解放の日」から1年。あの時S&P500が20%暴落した恐怖は、今でも鮮明に覚えている人が多いでしょう。しかし数字は明確です。何もしなかった人はほぼ元本を回復し、パニック売りした人は20万円の損失を確定させた。
2026年Q1もS&P500は-4.6%で、GDP 0.7%、雇用-92,000人と不安材料は続いています。しかし、1年前の経験が教えてくれるのは、「市場が最も恐怖に包まれている時こそ、何もしないことが最善の戦略」だということです。
次の暴落が来た時——それは必ず来ます——この記事を読み返してください。あなたの「何もしない勇気」が、将来のリターンを守ります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。過去のリターンは将来のリターンを保証するものではありません。